海外出張もこなす2児のワーキングマザーでありながら、会員200人以上の摂食・嚥下障がい児親の会「つばめの会」代表をされています。
仕事も、つばめの会も、どちらもフル稼働。忙しさを理由に何かを諦めるのではなく、「やれるところまでやってみる!」という熱い想いを常に持っている女性です。- 森さくらさんよりご紹介
プロフィール
・氏名:山内京子
・会社名:外資系総合科学サービス企業
・役職名:プロダクトマネージャー
・職種:マーケティング
・簡単な経歴:東京都出身。大学卒業後、医療関連メーカーにて研究開発を担当。25歳で結婚と同時に転職。外資系メーカーでマーケティング職を経験し、31歳、34歳で2児を出産。580gの未熟児だった第一子はNICUで命を取り留め、そのまま生後9か月まで入院。子供の持病のため保育園には入園を許可されず、1年半の育休の後に子供の介護休暇を3か月取得。その後、夫の在宅勤務を受け復職し、3歳で保育園入園が認められる。子供の通院とたまの入院とを繰り返しながら勤務を続ける傍ら、2011年に「摂食嚥下障がい児 親の会 つばめの会」を設立。その後3度の転職を経験し、現在は医療関係のマーケティングを担当している。
・居住地:東京都杉並区
・ご自身の年齢 :44歳 1974年
・お子様の年齢 :13歳 2005年生まれ、10歳2008年生まれ
・ワークスタイル: 都内オフィス勤務、国内外の出張あり。たまに在宅勤務。親の会の作業は土日および夜、通勤電車内などで行っています。
現在のお仕事の内容、ワークスタイルを簡単に教えてください。
主催している「つばめの会」は、胃ろうや経鼻チューブなど「経管栄養」を使う乳幼児の親の会です。親同士の情報交換とサポートの他、医療や社会への啓発活動を行っています。 www.tsubamenokai.org
仕事は外資系の総合科学サービス企業で、医療施設で使用する製品のマーケティングを担当しています。仕事で医療関係の学会に展示出展した経験を元に、患者会の展示を実施したり、会の活動で得た知識をベースに職場のダイバーシティプロジェクトでオフィス白杖体験会や社内の風疹予防活動を企画したりと、両方の経験を活用しています。
平日1日のスケジュールを簡単に教えてください。
6:00 起床
7:00 朝食(子供の分も含めて夫が準備)・身支度・簡単な家事
7:30 出勤 通勤時間は読書か、友人とLINE、会のメールを読みます。
9:00 勤務開始 (打ち合わせやデスクワーク。出張や外出の場合も)
12:00 ランチ 同僚とおしゃべりや、オフィス近くのレンタルルームで趣味の楽器練習
13:00 午後の勤務
18:00 退社
19:10 帰宅・食事準備
19:45 夕食・子供の宿題等
22:00 入浴・片づけや家事・主催する患者会「つばめの会」の業務
23:30 就寝
長女が経管栄養で保育園に入れなかった2歳前までは常にひどく寝不足でした。今は経管栄養もなく、小中学生に成長したので格段に楽になり、出張の日は食事の準備や子供の学校周りなど、すべてを夫に任せて安心して出かけられます。
出産して、何が一番変わりましたか?
妊娠前から想定して準備万端のつもりでいましたが、早産で生まれた上に子供に病気があり、すべての想定が覆されました。病気の子を育てることで、これまで当たり前と思っていたことが全く当たり前でないことがわかり、また様々な支援をされる方が大勢いることを知りました。これまで無知だった自分の傲慢さを思い知らされ、培ってきた価値観をひっくり返されるような経験でした。
ワーママとして育児&仕事をしていて良かった~!と思うHappyなエピソードを教えてください。
子供の医療的ケアに疲弊し煮詰まったときに、仕事で全く違う立場があることが救いになりました。
成長し子供がティーンエイジャーになった最近は、私が家で海外と電話で会議をするのを見て英語学習の必要性を理解したり、子供自身の経験から親の会の意義を理解したり、という場面がでてきたことを頼もしく思います。
育児&仕事をしていて大変なことはありましたか?それは何ですか?
子供の持病や突然の体調悪化が多く、度重なる入院では、大学病院の小児科入院病棟から出勤し、退勤後に病棟に戻っていた時期もあります。 子供の持病については病院だけでなく、園や学校や行政との相談や話し合いも必要でした。そのための業務時間の調整を夫婦ともに職場に協力してもらい、フローレンスという病児保育も活用しました。
それをどうやって解決していますか?
夫婦で協力・相談して、時間と人手をやりくりしました。夫の参加は家庭内の家事育児にとどまらず、積極的に児童館の子育てサークルに連れて行ったり、通院や行政との交渉もしました。今では担任の先生は私でなく夫に先に電話をするほど、活躍しています。
一方、経管栄養児の子育ては、社会のサポートや情報が不足しすぎていることを実感しました。今も、当事者の親が慣れない経験と少ない情報に悩んでいます。そこで同じ経験をした親同士で「つばめの会」を設立し、当時の自分達が必要としていた情報を得られる場となるよう活動しています。
育児と仕事、それぞれで一番大事にしていることは?
育児では健康管理と、子供の言い分や話を聞いて読み取ることの2つが目標です。仕事は効率を常に考えた成果を出すように心がけています。「つばめの会」の活動は、会員がより改善された環境で安心して子育てできる社会の実現が目標ですが、スタッフや自分が継続的に活動するため、無理をしすぎないことも大切にしています。
お子さんに日中看護が必要と分かり、通える保育園探しにかなりのご苦労をされたと伺いました。どんな状況でしたか?また、それでも働くことを諦めなかったのはなぜですか?
長女は2歳まで、鼻から胃に入れたチューブを通して胃に栄養剤を注入する「経管栄養」をしており、当時はこのような医療的ケア児を保育園で受入れることは、ほとんどありませんでした。
育休後に取得した介護休暇も子供が1歳9か月で終わってしまったのですが、幸運にもIT系研究者である夫の在宅勤務が認められたので、退職せず復職しました。保育園に入園できて通常の育児時短勤務に戻ったのは3歳目前です。
難しい医療的ケアを自分だけが抱えるのは子供にもよくないと実感したことから、仕事を諦める選択肢は最終手段と思っていました。とはいえ熱意だけで解決できる問題ではなく、各所のご協力あってこそ実現できたことだと思います。
仕事、患者会運営の二足のわらじだけでも大変なのに、料理やチェロ演奏などご自身の趣味の時間もちゃんと楽しんでいらっしゃいます。どうやってその時間を捻出してるのですか?
昼休みに行ける職場近くのチェロ練習室を探す、パンは深夜に焼く、というように「やれるかどうか」を考えずに「やる」前提で、実現する方法を模索するようにしています。
また、子育てや趣味への気力を保つ環境を整えるため、例えばひどく余裕がない環境なら職場と交渉したり転職するなどの環境設定をします。また一方で、趣味を楽しめない時期は潔く休み、趣味を苦に感じることのないよう調整しています。
在宅ワークも多いと伺っています。在宅のコツはありますか?
通勤の時間を仕事に充てられ、さらに集中しやすい在宅ワークの効率性を活かして、オフィス勤務より高めのアウトプットをするよう心がけています。満員電車に乗らない分、集中力を高めやすいです。
今後の目標やプランを教えて下さい!
代表を務めている「つばめの会」で目指している社会を実現するために必要な活動はたくさんあります。また、子供の勉強もみたいし、仕事も趣味も楽しみたいです。全てに満足いくまで時間をかけることは難しいのですが、無理をして自分の限界まで挑戦しすぎないことで、息の長い活動にすることも大切と感じます。
最後に、メッセージをお願いします。
医療的ケア児や持病を持つ親子でも普通に接し、見守ってくれた同世代の親子や先生方に家族で助けられてきました。もしそのようなご家族を見かけたら、他のご家族と同じように、または少しだけ積極的に、声をかけていただきたいと思います。
私は運よく、医療的ケア児を育てながらも働きながら親の会を設立し、3回の転職をして正社員を続けられました。しかし医療的ケア児の親の誰もが、普通の親と同様に休息を取り仕事ができる社会とはまだ言えません。医療的ケア児や極端な小食・偏食の子が社会ですくすく育つために、どうか周囲の方のご理解をお願いします。
インタビュー by 森さくら