今回紹介するのは、外資系のメーカーでマーケティングマネージャーとして活躍する菅谷さと子さん。
扱っている商品がさく乳機ということで、ママの経験を活かし、ママ目線でのマーケティング、営業活動を続けられていますが、当初は社内で子育て中のママは菅谷さんだけだったとか。
実は、私が初めてお会いしたのは、前職の電機メーカーで広報をご担当されていた時のこと。海外での展示会を控えたタイミングでお話を伺い、ママだということを全く感じさせないバリバリの広報ウーマンという印象を受けました。当時まだ1歳だったお子さんをご主人に託し、約1週間ほどスペインに出張すると聞いて衝撃を受けたことを今でもよく覚えています。
そんな菅谷さんがなぜ今のお仕事に就かれたのか?その背景や転職活動についてお伺いしました。子育てをしながらもやりたいことをどう実現していくか、勇気を与えてくれるインタビューです!
プロフィール
・氏名:菅谷さと子
・会社名:メデラ株式会社
・職種:マーケティングマネージャー、コンシューマーセールスマネジャー
・簡単な経歴:
→家電メーカー(営業、マーケティング、広報)→母乳育児関連メーカー(マーケティング、営業)
・居住地:東京
・ご自身の年齢:36歳
・お子様の年齢:3歳(2012年1月生まれ)
・ワークスタイル:フル
現在のお仕事の内容を簡単に教えてください。
メデラというスイス資本のメーカーで、母乳育児事業、主にさく乳器を中心とした製品のマーケティング、コンシューマーセールスを担当しています。メデラは、世界でNo.1、国内では電動さく乳器でNo.1の企業です。日本ではまだ『さく乳』と言うと一部の方向けの製品と考える方も多いですが、母乳育児中のすべてのママに使っていただけるサポートアイテムです。米国では90%以上のお母様が出産前に電動のさく乳器を準備します。もっと多くのママに母乳育児、さく乳器について知っていただくこと、そのサポートとなれる企業となるべく、マーケティング、営業活動を行っています。
平日1日のスケジュールを簡単に教えてください。
5:00起床・自分のしたく
6:00 朝食&夕食作り
6:30 子供起床
7:30 通勤
8:00 子供・主人 通園&通勤
8:30 出社
18:00 退社(お迎えの場合。お迎えなしの場合は残業。)
19:00 お迎え
21:30-22:00 子供就寝 寝落ちしなかった場合には、仕事や自分時間。
23:00 就寝
お仕事を続けられてきた中で、結婚や出産のタイミングは理想通り(計画通り)でしたか?
結婚するまでは計画通りではなかったというか、計画を立てていませんでした。結婚のタイミングで主人が海外赴任中だったので、結婚後1年は別居婚でした。帰国後1年は二人で過ごし、そろそろというタイミングで妊娠。ここまではまあ計画通りでしたが、妊娠後、悪阻がひどく会社を1ヶ月休みました。幸い繁忙期ではなかったため、最低限の仕事をメールと電話を駆使し、上司のサポートを得つつ、どうにか。その後1ヶ月悪阻が落ち着くまではタクシーで「ゲロゲロぶくろ」を持って通勤し、会社でも医務室で休みながらの勤務。まったく予想外で、いつまで続くかわからない悪阻との闘いは本当につらく、妊娠出産は計画通りにはいかないと実感しました。その後快適な安定期を経て9ヶ月まで働き、産休へ。産休中も出産するまでは妊娠性搔痒(そうよう)に苦しみ、産休を満喫しようと思っていたところがそうもいかず。出産は比較的順調で、子供もあまり病気もせず、育休中はママ友と旅行したり、イベントを企画したりと、充実していました。育休は9ヶ月取り、2012年の11月に復帰しました。早めに復帰した理由は、保活です。「保活」という言葉が出始めた頃で出産後半年してから区役所に問い合わせた結果、前年の実績だとどこの認可園にも入れないことが判明。通える範囲の保育園を回り、1箇所だけ空きがあった無認可保育園に預け復職することで翌年4月の入園を目指しました。育休をどれだけ取るかはきちんと計画してなかったので、計画通りというわけでもなかったです。
出産して、ご自身の内面では何が一番変わりましたか?
出産前は仕事で成果を出すこと、キャリアを形成すること第一に考えていましたが、娘にとって良い環境をどうすれば用意できるか、を第一に考えるようになりました。仕事では、以前は業務量が多くても、とにかくがむしゃらに働き、気合と根性と長時間労働でどうにか帳尻を合わせていました。復帰直後は先輩に出産後もアウトソースしながら出産前と同じように働いている方が近くにいたので、復帰約1年半後に転職するまでは、ベビーシッターさんを頼んで、残業、出張もしていました。ただ、復帰直後は体力的にとてもきつかったです。育休中のんびりしていたし、出産を経て体質が変わったのか、帰宅後に玄関に座りこむことも。転職後は業務量的には少し落ち着きましたが、とは言え出産前ほど時間はないので、全体のタスクの洗い出し、プライオリティ付けをして、計画的、効率的に仕事をすするめるように心がけています。ただ、子供も成長しながら心も身体も変化していくので、なかなか思ったようにはいかないです。仕事でも育児でも至らないことばかりですし、人としてもだめだなーと思うことが多いのですが、そんな私にも「ママー」と満面の笑顔を見せてくれる娘はパワーの源ですね。
大手電機メーカーの広報から現在の会社へ転職されたとのことですが、なぜ転職されたのでしょうか?また転職してよかったですか?
もともと電機メーカー入社の理由も海外でマーケティングをしたい、新しい市場を開拓するような仕事したいというのものでした。入社6年目で海外赴任も目前のタイミングのときに、すでに数年遠距離恋愛をしていた今の主人と結婚することになり、これから海外赴任をするというのは、家族を形成する上でどうなんだろうと悩みました。結果、人事部に相談したり、社内就職活動をして、同じメーカーのグループ会社の広報に異動しました。日本にいながらも海外のビジネスに関われる部署を探しました。未経験で受け入れてくれた職場に感謝しつつ、マーケティングとは違った経験を積める面白さを感じつつも、ビジネスを動かすマーケティングの仕事への未練は断ち切れず、充実している一方で本当に悶々とする日々でした。これでよかったのかな、と。何で自分ばかりがキャリアを調整しなきゃいけないんだって。主人からどうして欲しいと言われたことはなかったし、自分で決めたことだったのに、気持ちを抑えきれず主人にあたったこともありました。
広報に異動してから3年経った後に出産し、復職したのですが、またこれが本当に自分のしたいことなのかとまた悶々とする日々。やっぱりマーケティングがしたい、と言う思いが断ち切れず、復職後数ヵ月後から転職活動を始めました。社内にマーケティングの部署もありましたが、自分の裁量の広いポジションで探しました。
しかし、転職活動を始めてみるとこれがなかなかうまくいかず…。マーケティングのブランクが5年近くありましたし、希望していた外資企業でのマーケティング職は少人数組織がほとんど。直近での経験不足を直接指摘されることもありました。また、書類審査で落ちることもあって、大企業で働いていた人が中小企業でマルチタスクできるはずがない、とエージェントを通じて伝えられたことも(そんなことないと思いますが)。当時も非常に忙しい職場でしたので、転職活動の時間もあまり取れず。もう無理かも、とあきらめかけたこともありました。仕事も責任が増え、やりがい自体はあったし、環境も恵まれていたし、そもそも転職するのが間違い、かと。でも、やっぱり計5年近く悶々としたのだから、やらない後悔はしたくなくて。転職活動は長くとも半年、と聞いていたのですが、自分の納得できるポジションでオファーが出るまで結局1年近くかかりました。
転職活動では最初の面接時に子供がいることを、当時の就業状況(フル、残業、海外出張)、サポート状況(主人、保育園、ベビーシッター、病時保育など)を説明するようにしていました。
現在の会社には私が入社した当時は育児中のママはいませんでした。前例がないと会社もとしても不安があったと思います。面接ではかなり突っ込んで、どう両立していくのか、出張はどのくらいできるのかなど質問してくれて、かえってありがたかったです。私が入社した後は、事業の拡大もあり育児中のママが4人も増えました。
育児関連の業界を選んで活動していたわけではなかったのですが、結果的に自分の妊娠・出産・育児の経験が活きる会社に就職することになりました。
仕事を通じて、たくさんのママや赤ちゃん、産婦人科、小児科の医師、スタッフの方々にお会いします。出産、授乳はお母さんにとって、赤ちゃんにとって、かけがえのない経験です。仕事通じて関われることに大きなやりがいを感じています。転職してよかったです。
転職後、「ワークライフバランスが改善された!」と伺ったのがとても印象に残っているのですが、どんな点でそれをお感じになりますか?
ワークライフバランスの改善を期待して転職活動を行っていたわけではないです。むしろ、何ができるか、やりがいを重視していました。ただありがたいことに、大分改善されました。以前は前述した通り、深夜残業や家に持ち帰って朝まで、と言う働き方でしたが、今は18時には退社し、残業も週1回程度に。小さな組織ですので、意思決定までの時間も短いですし、会議も最小限。説明のための資料作りはほとんどありません。スイス本社の働き方もそうですし、成果を出せば働き方は自由とトップも公言しており、たとえば、外出場所が会社より家が近ければ、帰社せずに近くのカフェや自宅で仕事をしたり、夜に海外とテレコンがある場合には、早めに娘を迎えに行って、寝かせた後に参加しています。
子供が成長する中で、以前よりもただ一緒にいるだけではなく、会話したり、遊んだり、子供に集中する時間が多くなったので、以前の職場での私の働き方では今頃無理が出てきたのかもしれません。限られた時間の中で、最初にじっくり考え、仮説をたて、計画を立て、実行する。課題は多いですが、自分だけではなく、チーム、組織の業務についてももっと効率化していきたいと思っています。とは言え、まだまだなので、今年は朝活にチャレンジし、もっと早く会社を出られるようにしたいです。
また、はっきり言って、今の職場は以前の大企業のように、いろんな制度がそろっているわけではないです。しかし、小さい組織だからこそ小回りが利くし、素直にコミュニケーションしやすく、変えていける余地が大きいと思います。たとえば、先日入社した育児中のママは授乳中だったので、さく乳室を整備したり、新しく入社する別の社員は通常より1時間少ない勤務時間にしたり。自分たちで制度や環境を整えやすいというメリットもあると思います。
子育てとお仕事の両立にあたり、何か工夫していることはありますか?
日々模索中です。
ワーママとして育児&仕事をしていて良かった~!と思うhappyなエピソードを教えてください!
・育児では・・・保育園に迎えにいくと、「ママー!」と満面の笑顔の娘。ありがとう。娘を通じて、交友範囲が広がったこと。
・仕事では・・・自分の育児の経験が活かせること。いろんなママに会えること。
ご主人との家事・育児分担はどうしていますか?
私:食事
主人:洗濯、保育園送り
保育園の迎えはお互いの仕事の状況に合わせて相談して決めています。スマホアプリで仕事やプライベートの予定が分かった時点で共有するようにしました。
掃除や洗濯は、週に1回金曜日にアウトソースしています。贅沢かなとも思いますが、金曜夜に家に帰ってきて、きちんと整えられていると気持ちがいいし、週末を掃除からはじめなくてすむし、精神的な安定材料ですね。
前職・現職ともに年に数回、1週間程度の海外出張、土日の出勤もたまにあります。両親は遠方なので、その場合は主人が基本的には家事も育児も担当しています。主人はそもそも激務なので、相当大変だと思います。難しい場合には、ベビーシッターさん、同じ都内に住む姉にお願いすることも。2歳になってから出張の説明をするようにしたのですが、すごく嫌がって。困ってしまって、先輩ママを真似て「鬼退治をしにいく」といったら、かえって喜んで、「がんばれー!」って。保育園でもその話を出張中ずっとしていたようでした。ただ、ずっと鬼退治とは説明できないし、今後どうしようかなと。
育児&仕事をしていて一番大変なことは?
・育児では・・・あまり体調を崩さない娘ですが、体調が悪いとき。もう修了しましたが、主人が1年間大学院に行っていたときは土日も不在で、大変でした。転職前で仕事も激務で、その当時の記憶があまりありません…。
・仕事では・・・時間
それをどうやって解決していますか(していこうとしていますか)?
Try&Errorの繰り返しです。
育児と仕事、それぞれで一番大事にしていることは?
・育児では・・・娘の話を聞くこと。
・仕事では・・・いろんな人の話を聞くこと。
これからの目標を教えてください。
・育児では・・・楽しむこと。もっと子供と密な時間を持つこと。
・仕事では・・・ママのサポートになるような情報やサービス、製品をきちんと提供すること。
サイトを覧の皆様(ワーママ仲間)にメッセージをお願いします!
やりたいことを決めたら腹を決めること。
ワーママの転職と言うと、ハードルが高く考えられるかも知れません。それでもしたいこと、変えたいことがあったら、できること、できないことを整理して、あとは腹を決めてチャレンジ。すべてばら色とはいかないと思いますが、でも、悩んだ分だけ、その後チャレンジに直面しても自分を納得させられる理由があるはず。ママだから○○が出来ない、ではなくて、○○なら出来る、思考で一歩踏み出すことも必要です。
メデラ株式会社
http://www.medela.com/JP/ja/breastfeeding.html
メデラママ 母乳育児応援サイト
ママたちのストーリーを掲載しています。ぜひご覧になってください。
インタビューby 柴田広夢