今回のインタビューは、エンタテイメントの企業である株式会社ムービックで課長を務める渡邉香里さん!
「男女平等だと育てられ学校を卒業したのに、社会に出たらそうではなかった。」渡邉さんのインタビューを一読したとき、そのエネルギーが心に沁みました。パワーの源は「愛と怒り」と答える渡邉さんが、どのようにタスク盛りだくさんの毎日の仕事をこなしながら、ご家族とも暖かなコミュニケーションが取っているのか、その秘訣を伺いました!(千田)
プロフィール
・氏名:渡邉 香里
・会社名:株式会社ムービック
・役職名:課長
・職種:アニメ・漫画・ゲームのキャラクターグッズの企画営業
・簡単な経歴:中央大学法学部卒。株式会社ムービックに新卒で入社。映画館向け物販事業の企画営業を担当し、29歳で社内結婚、31歳で出産。新卒採用者として初めて、育児休業を取得・4ヶ月で復帰。復職後、キャラクターグッズのオフィシャルストア事業に従事。管理職に昇進。合わせて、社内での産休育休制度の充実、マニュアル整備を提案・推進し、初のダイバーシティ担当にも就任。
・居住地:東京
・ご自身の年齢 :38歳(1979年生まれ)
・お子様の年齢 :5歳(2011年12月生まれ)
・ワークスタイル:月~金フルタイム勤務、月に何回か出張あり。
現在のお仕事の内容、ワークスタイルを簡単に教えてください。
アニメイトグループの中核企業・ムービックで、アニメ・漫画・ゲーム等のキャラクターグッズの企画制作、各作品のオフィシャルストアの企画・運営をしています。ストアでの限定商品の企画、フェアや店内イベント等の販促から、宣伝、スタッフのマネジメントや店舗の運営まで、トータルでお店をプロデュースする仕事です。様々なストア・企画を立ち上げ、部署で常時10店舗前後を運営しています。
誰もが知っているタイトルから、旬でコアなタイトルまで、老若男女問わずファンの方々が集い、世界中のお客様に来てもらい、喜んで頂ける、そんなやりがいのある仕事です。
会社のモットーは「楽しくなければ仕事じゃない」。
お客様をワクワクさせる、楽しい仕事なので、私たちも全力で楽しんで働いています。
平日1日のスケジュールを簡単に教えてください。
7時半 起床(朝の支度や朝食準備は夫がやってくれます)
9時半 出社
18時半 退社
19時 保育園お迎え(週1回ずつ義母・夫も担当)
19時半 夕飯 娘のピアノ練習やドリルにつきあう
21時 入浴~子供と遊んだり、寝かしつけ
23時~25時 メールチェック、仕事、読書、ゲーム
25時 就寝
週1程度で取引先様との会食、月2回程度の国内出張があります。ママはみんな早起きだと感じていますが、とことん朝が弱い私は、結局夜型のままです…。家事は週末にまとめてやります。
出産して、何が一番変わりましたか?
優先順位で、自分の人生が一番ではなくなったので、肩の力が抜けました。
同時に、子供が生きるこれからの日本や社会全体に責任を感じるようになり、豊島区の行政委員に立候補して1年間、女性が住みたいまちづくりを提案する「としまF1会議」の委員を務め、他の自治体を調査して提案した「子育てナビゲーター」の新設を実現しました。豊島区が1400万円も予算をつけてくれたんです!
行政が他人事から自分事へと変わりました。
今でもたまに各所での講演に声をかけてもらったりしています。
子供がいなかったら出会えなかった、新しい世界やステキな人々に関わり、自分自身が成長でき、仕事にも良い影響が出ています。
ワーママとして育児&仕事をしていて良かった~!と思うHappyなエピソードを教えてください。
元々モーレツに働いていたので、育児が趣味みたいになっています。逆に仕事のおかげで、娘と二人だけの世界に閉じこもらずに済むので、視野が広いままでいられる。基本、平日はその二つしかしていませんが、両方とも好きなことなので、前よりバランスが取れて、常にハッピーです。
育児&仕事をしていて大変なことはありましたか?それは何ですか?
復帰して3年間は自分との闘いでした。
会社では120%で仕事できない罪悪感と劣等感。以前の自分や専業主婦持ちの男性社員と比べて、仕事だけに集中できない。時間にも制約がある。部下と飲みにも行けない。
育児では、専業主婦や他のママと比べて、子供と一緒にいられない、手をかけられない、罪悪感と劣等感。家事も苦手ですし。出張先から電話したら、熱出した子供が泣いていたり。
そんな状態で働いて、結果も出せず、いつか後輩男性の部下になるくらいなら、いっそ今辞めて育児に専念した方がいいかもしれない、とも思い落ち込みました。
それをどうやって解決していますか?
同じ会社で働く夫に相談したら「それなら俺が辞める」と言いました(笑)。私が辞めるのは日本経済の損失だから、俺が辞めるって!
その一言で悩んでいるのがバカバカしくなりました。夫に辞められても困るし、もう協力してサバイブするしかない。あとは覚悟と自分の気持ちのコントロールだけだと気付いて、悩んでいる時間の分、少しでも前に進むことにしました。
フルタイム正社員と専業主婦はダブルワークですから、そもそも男女関係なく誰にも無理。少子化の中、人口増やして、更にフルで働いて2人分で税金も納めている。我が家は国から表彰されてもいいくらいだ!と思うくらい図々しくなりました。
あとは仕事で結果を出すことです。役職相応の仕事をきちんとする、任されたら+アルファの仕事で応える。社内外から常に厳しい目線で見られているつもりで、それに応える覚悟でいます。どんなに頑張ってても結果が出せなきゃダメ。
具体的に言うと「子持ちは使えない」「女に管理職は無理」「働いているから子供がかわいそう」と絶対に言わせるもんか!と常に意識しています。
誰にも言われたことないですけど(笑)。
育児と仕事、それぞれで一番大事にしていることは?
仕事では、育児を言い訳にしないこと。
育児では、仕事を言い訳にしないこと。
どちらもやると決めたのは自分なので、私にしかできないことで成果を出す。任せられることは信頼して任せる。どんな選択にもリスクはあるので、責任を持って自分でケツを拭く、ということでしょうか。
仕事を続けていく上で、具体的にどのようなサポート体制があるのか教えてください!
他のママたちに申し訳ないくらい、ものすごく整っています。整えているというか。
まず会社の近くに住んで、通勤時間をカットしています。1分でも惜しいので。運よく夫の実家も近く、義母は定年までテレビ局で勤め上げた、ワーキングマザーのお手本のような人なので、いつも応援してくれ、娘のバレエの送迎と合わせて週1のお迎え~夕飯を担当してくれています。
そんな義母のおかげで、夫は子供の頃から家事もしていて、自分のことは全て自分でできます。私も同じ金額を家に入れるので、家事も半分ずつ、という理論で全て半々で分担しています。
また、妹夫婦に近所に住んでもらい、平日の夕飯を外注しています。代わりに私が妹夫婦の家の食費も払う。先日、引越しを検討していたので、敷金の10万円を渡して近くにしてもらいました(笑)。金で解決のパワープレーです。
去年、郊外の実家を売って、実の父母も同じ駅に呼び寄せました。父の病気もあり、若い時から私が金銭的なサポートをしてきた為、私が働き続ける事が大事なので、強気な選択ができました。孫といるのは楽しそうですし、何かあってもすぐサポートできる距離で親孝行であるはず!と自分に言い聞かせています。
これで小1の壁突破作戦の準備完了!です。
私が仕事に全力を尽くせるよう最適化した環境なので、大黒柱である私が働くことを中心に、家族全員が動いている状態ではあります。絶対辞められません(笑)。
ものすごくエネルギー溢れる渡邉さん!そのパワーの源は?
愛と怒りです。ロックですよね(笑)。
男女平等だと育てられ学校を卒業したのに、社会に出たらそうではなかった。
女であることで圧倒的に生き辛かった。娘と娘世代の全ての女性たちのために今私ができるのは、自分と自分の会社、身の回りの社会を変えること、もっと良くすること。男女雇用機会均等法時代の先輩たちのバトンを受けて、私達世代が頑張らないと。
娘たちに同じ思いはさせたくない。
パートナーや家族とのコミュニケーションで大事にしていることを教えてください。
チームワークです。夫がキャプテン、私が副キャプテン。娘もひとりのチームメイトとして尊重し、対等に参加します。皆で協力して家庭を運営する。誰かのサポートをする。
旅行先や日程、ビニールプールの購入、ハロウィンの仮装はどうするか等、なんでも家族会議で決めます。休日も基本的には一緒に行動しています。
頑張る時も、楽しむときも、ダラダラするときも一緒です。
先日、私が夫から給与を受け取っているのを見て、娘が自分の手元にあったお小遣いを持ってきました。「私もチームに参加しているから、私のお金も半分使って。ママは少しでも休んで。」と言ってくれました(笑)。
家族とのコミュニケーションで工夫していることは?
子供を子供扱いしないこと、夫も子供扱いしないこと。
私より可能性のある人間として、期待してお願いして、苦手なところはフォローします。
最終的には、任せた私が責任を取ります。仕事での部下に対するスタンスと同じです。
自分の心と身体のメンテナンスで工夫していることがあったら教えてください。
好きなこと、やりたいことを我慢しない!全力で遊ぶ!!
働いていること、子供がいることを理由にせず、やりたいなら絶対やります(笑)。
年に1回家族でハワイと海外ディズニーパークに行って全力で遊んでリフレッシュしています。国内ディズニーは、年間パスポートを家族で持って、土日はだいたいディズニーで充電しています。私の場合、エンターテイメントを体験すること、遊ぶこと自体が仕事にもつながりますし!
今後の目標やプランを教えて下さい!
2人目産んで、またすぐ復帰して、新しい仕事にもチャレンジしたいです。
あとはディズニーのカリブ海クルーズに行くこと!それが最後で、海外ディズニー全制覇です。
先の話だと、娘からは「私が大人になったら働くから子供の面倒見てくれる?」と言われています。今は全力で働いて、色々なサポートで娘を一緒に育ててもらっているので、50・60代になったら社会への恩返しをするつもりです。保育や地域社会に貢献できればと思っています。
最後に、こちらのインタビューをご覧になっている方に向けてメッセージをお願いします。
私も、身の回りにロールモデルがいませんでした。
でも当たり前でした。私とそっくりな人はそんなにたくさんいないから。
きっとワーママの生活は全てその人たちの作り上げたオーダーメイドです。
「香里さんにしかできない」「私には無理」と何度も言われました。皆にできることだとは思っていません。しんどいこと多いし。だからこそ、体力と能力と環境があって、できる私がまずは頑張る。風穴を開ける。もし後に続く人が出てくれたら嬉しい。それだけです。
育休復帰1号だった私ですが、今は会社の制度やフォロー体制も充実し、社内に10人以上のワーママがいます。これがとっても嬉しい!色々な働き方、家族があっていいと思います。
あとは自分がどうしたいか。仕事も家庭も、自分でマネジメントするしかない。
働いていると、金銭的にも、精神的にも自立できるので、自分で選ぶこと、変えることができる。だから、全力で女の人生を楽しもうと思っています。
女に生まれてよかった!と思っていますし、いつか娘にもそう言わせたい!
一緒に楽しみながら頑張りましょう!
(インタビュー:杉浦那緒子、構成:千田)