矢野 りんさんは、Android女子部部長さんでもあり、ヒットアプリ「Simeji」のプロダクトデザイナーであり、他にも注目度高いプロジェクトに参加されていたり、イベントでもよく話されていたりと、好きなことを仕事にして、アクティブに活動されているパワーママさん。
何を意識してどうしてきたから今があるのか・・・?デザイナーの方、サービスづくりを続けていきたい方には、特に読んで頂きたいインタビューです!
プロフィール
・氏名:矢野りん
・会社名:バイドゥ株式会社
・職種:プロダクトデザイナー
・簡単な経歴:女子美術大学芸術学部卒業。プロバイダー勤務や音楽制作事務所設立を経てフリーランスでWebメディアのデザインを行う。インターネットのポテンシャルを生かしまくれるAndroidアプリの開発が好きになって現職へ。
AndroidAndroid女子部ぶちょう
・ご自身の年齢:40歳(1973年生まれ)
・お子様の年齢:10歳(2003年7月生まれ)
-現在のお仕事の内容、ワークスタイルを簡単に教えてください。
SimejiというAndroid向けの日本語キーボードを開発しています。クラウド変換機能を使い「変換語がタイムリーに変わる面白い入力手段」の運用とデザインが仕事です。主な利用者は10代から20代。ケータイの「よく使うことばに絞り込まれてしまう」入力方法から一歩進んで「いままで使ったことがないことばやことばじゃないかたちでも気持ちが伝えられるようになる道具」を実現しようと日々奮闘中です。
-平日1日のスケジュールを簡単に教えてください。
朝起きたら掃除、洗濯をして朝ご飯。時間があったら家でメールをチェックします。
出社して朝ミーティング後業務。一日のTODOをまとめます。
夜はできるだけ定時に退社。
子供はもう学童保育から卒業しているので、プールや英会話、コーラスの習い事が終わったら夕方頃から家で留守番をしています。
遅くとも19:30には買い物をすませ、帰宅して夕食。子供と話をしたり、一緒に漫画を読んだりして過ごし、10:00には一緒に寝ています。
-出産して、何が一番変わりましたか?
いままで一人でなんでもやってきたという気負いというか、思い上がりがあったのですが、出産を機に周囲の人々の手助けとか、子供が自分の人生にもたらしてくれた楽しみへの感謝とかが実感できたことがよかったです。あと、ひとりだと陥りやすい良くない習慣(遅寝遅起きとか..)を手放せたこともよかったです。
-ワーママとして育児&仕事をしていて良かった~!と思うHappyなエピソードを教えてください。
(ブログにある、女性もどんどん働いた方がいい。の話が聞きたいです!)
私が自分で自分の生き方を主体的に選べたのはやはり仕事をしていたからですね。
仕事をするとお金も得られますが、それ以上に「自分にできること」が、その気になれば理解できるようになります。自分にはこれができる。やれることがある。と、静かに信じていれば「私は周りの足をひっぱりがちだわ」とか「あれこれこういう補助がなければうまくいくわけないわ」といった、気持ちがすこし減ってきます。そうなれば周囲を手助けするのも、周囲の力を借りるのも、同じこととして受け入れられるようになります。
でも私は最初からそういうもののみかたをしていたわけではありません。このことの多くは赤ちゃんのころからいままで、子供が「こんなことできるわけがない」という自分の限界を克服することを、子育てを通して教えてくれたからです。
ちいさい話ですが、まだ2ヶ月くらいの息子を「つるっ」と手から落っことしそうになったとき、産着のひもが小指にひっかかってすんでのところで落とさなかったことがあります。このとき、普段たいして使っていない小指まで使えば、大変なことも乗り越えられる。とやたらしみじみ感じたことを思い出します。仕事だけ、子供だけでも自立や平等の精神を持つことは可能だとおもいますが、仕事をしながら子育てをする自分にとって子供は、すごいメンターのような存在です。
-育児&仕事をしていて大変なことはありましたか?それは何ですか?
子供が家で一人で過ごす時間が割と多いので、インターネットやゲームの時間が規制しにくいなど、子供の行動を「親が管理する」という手段をいまのところあきらめなければならないことです。与えないという選択肢もありましたが、一緒に楽しめることも多いので与えるほうを選びました。
-解決方法は・・・「話し合い、意見交換して押し付けない」
平日はゲーム禁止。のような「禁止」による規制をすると逆にやりたくなってしまう。勉強をしろというと、逆にやりたくなくなってしまう。といった「息子の性質」について話し合い、どうすればやりすぎないで生活できるのか意見交換しています。息子の意見をなるべく尊重して、紋切り型の指導方法を押し付けないように彼に合った方法を模索するという点では、仕事でチームの意見を取り入れることとさほどかわりません。あとは、知識が得られそうな本を手に取りやすいところに置いたり、逆に規制しないことで飽きさせるようにしています。
-育児と仕事、それぞれで一番大事にしていることは?
子供の行動をできるだけ肯定し、自分自身を大事に、好きになってもらえるように心がけています。ダメな事はダメと言いますが「○○ができない自分はダメなやつだー」と自分を責めるタイプは競争心こそあれども「自分はこれでいい」という落としどころが得られず後年苦労しそうな気がするので(笑)
仕事には、自分の「納得」が、求められたクオリティとイコールになればいいなあと希望を持って取り組んでいます。
-矢野さんのロックなライフスタイルがカッコいい、とよく聞きます。ライフスタイルのモットーがあれば教えてください!
常に、明日がくるのが楽しみだー!という気持ちを持つようにしています。明日こういう機能の設計をするんだ。から、明日お風呂にこの入浴剤入れるんだ。まで平等に。あとは朝気持ちよく一日始められるように夜は部屋を掃除しておくこと。あとは子供と「今日一日で、何かうまくいったこと」を共有すること。あ!割とふつうですね。
-フリーのデザイナーから、チームでアプリを作って企業に買収されるというキャリアを持つ矢野さん。なぜフリーのデザイナーをしていたのですか?
ながくWebの仕事を手がけるなかで、仕組みを作る側からコンテンツを作るほうに興味がうつり、ライティングの技術をしっかり習得したいという気持ちからライター業を多く請け負うようになりました。しかしデザインの仕事に対する興味もずっと持っていたので、記事を執筆したり、デザインしたりということが幅広くできる立場といえば、フリーランスでしたね。縦横無尽に自由に活動の場を広げられるのもよかったです。
-それからも、マンガ書いたり、3Dプリンタのプロジェクトをしたりしていますよね。
面白そうな事を見つけ、行動して、チームを作る。どうしてそれができるのですか?
じつは自分で能動的に面白い事を見つけているというよりも、人から与えられていることのほうがずっと多いですね。若い頃からのクセなのですが、やってみたら?と言われたことについては「えー無理」などと言わずホイホイ受けて実行してきた結果なのだとおもいます。楽しく流されて生きているという感じです。ほめられたいんでしょうね。あと、行動がやたら早くて、やるときめたらあまり間を置かずにどんどんやってしまう性格なのですが、その点も「矢野はできるんだなあ(それもあんがい早く)」と、ほめられる要素を少しでも盛りたいからなのでしょうね..。
-どうしたら、矢野さんのように、自分の得意分野を活かしてヒットサービスを仕込んでいけるようになるのでしょうか?
私自身は自分がうまくできているようにあまり思わないのですが、周りの人を見ていると、技術的な知識だけにとどまらず、教養の範疇が広い(例えば他国の食文化にやたら詳しいとか、たしなんでいる文学小説や映画の数がすごいなど)人は持っているアイデアの数も多いように思います。仕事も趣味も充実させていると、おのずと成長していける気がします。
-今後はどのような事を考えているのですか?
生まれたときからずっとIT技術に囲まれている10代や20代といった若い層が「使うことで視野が広がる」サービスを作りたいと考えています。インターネットコンテンツに過度に頼ると自分の頭でモノを考えなくなったり、視野が狭くなったりしますが、そういうネガティブな行動様式にハマらずコミュニケーションの可能性が広げられるようなサービスを作ってみたいです。
-最後に、オーディエンスのワーママ、未来のワーママにメッセージをお願いします。
私はずっと子供に育てられてきたようなものなので、子育てに「時間をとられている」という意識はあまりありません。そういうふうに思えるのはあまり「親だぞ!」と自分を定義していないからかも。友達でもないけど、支配せず、チームメンバーみたいなかんじかな?それぞれが独立した人間として尊重しあえるようになれば「〜しなければならない」という気持ちも背負わなくて済むしラクですよ〜。おカネは自分がマネタイズ担当と腹をくくって責任持つとして…あまり「親!!」として気負わない生活オススメですー。
インタビューby 椿