今回のパワーママインタビューは知識ナシ、経験ナシから男性の多い業界へ飛び込み、家業を継いで会社経営される境順子さん。最近では家業のある大学生に事業継承についてお話されることもあり、ご自身の経験や学びを伝える機会も持っておられます。
「組織も家族もチームであることを意識している」という境さんがどのような思いで仕事や子育てに向き合っておられるのかを伺いました。
ご自身について教えてください。
・氏名:境 順子
・会社名・職種:株式会社 マスコール 代表取締役社長 (高圧ガス製造販売業)
・簡単な経歴:
女子高、女子大を出て産業ガスメーカーに入社。その後、自身が遣り甲斐を感じるアパレル関係で非正規社員にて働き始めたが、家業で人材不足だという父の声に、26歳で親孝行のつもりで家業である高圧ガス製造販売会社の医療部門に入社し、病院や肺疾患などの患者様へ在宅酸素療法のフォロー営業をしはじめる。その中で会社の経営状況が良くないことがわかり、家業の難しさと家族としての責任を感じて、30歳で常務取締役として会社の根幹である産業ガス事業に入る。翌年、3兄弟の末娘ながら、業界専門知識、社員との信頼関係、経営ノウハウもほぼ持っていないまま危機感だけで事業承継し代表取締役に就任。その後、結婚、2男児を出産、無いものづくしで継いだ家業も育児も体当たりの連続で9年目、現在も無知と向き合い続けながら、男性中心の業界で数少ない女性社長して、日々奮闘中。
・居住地:大阪市
・ご自身の年齢 39歳
・お子様の年齢 5歳、2歳
・ワークスタイル フルタイム(会社経営)
現在のお仕事の内容を簡単に教えてください。
高圧ガスというとイメージしにくいかもしれませんが、病院での吸引用の酸素、お菓子の袋などが膨らんでいるのは酸化防止の窒素、炭酸温泉用の炭酸、とガスの用途は広く身近なものです。私は、そのようなガスを自社充填工場で用途に合わせて容器に小分けし配送販売し、お客様のガスの使用環境や機材設備などの保守や提供などトータルにご支援している、という会社の経営管理をしています。
平日1日のスケジュールを簡単に教えてください。
AM4時 自分時間(メールチェック、仕事の調整、家事の残り、自己研鑽の時間)
AM7時 朝食、保育園準備
AM8時 仕事準備(保育園への送迎は夫)
AM9時 仕事開始
PM6時 退社時間
PM7時 保育園お迎え、夕食買い物
PM8時 食事、お風呂、片付け、洗濯
PM9時45分 寝かしつけ(絵本や一日にあったことを話しながら一緒に寝ることが多い)
出産して、ご自身の内面では何が一番変わりましたか?
仕事が精一杯に大事だったところで、出産して小さな家族がとても大事になりました。そのふたつをなんとか大切にしようとする場合、私の場合はけっこう睡眠も大事だと気づいて、出来るだけ6時間は寝るようにしています。また、限られた時間の中で工夫は悩むところですが、今まで大切だと思ってきた細かなこだわりや習慣、価値観はずいぶん変わった気がします。(例えば、服や靴は好きで雑誌を見たりウィンドーショッピングしたりする時間が至福だったのですが、今はどちらも一切せず買い物は必要な時にほぼネット購買です。試着もせず買うなんて昔ではあり得ませんが、やってみると失敗もしますが気になりません(笑))時間に迫られて見直すたびに今までのこだわりが削げていって、案外こだわりが少ないことに気づき自分で驚いています(笑)
ご主人との家事・育児の分担はどうされていますか?
家事や育児の明確な分担はしていません。夫は結婚前から起業していて仕事時間を大事にしているので、普段は朝方になることも多く、その中で家事や育児を役割で分担してもらおうとすると、家庭内がかえってギクシャクしてしまって…(笑) それから、夫には「普段はできる時に出来ることをしてもらう」「困った時は協力してもらう」というスタイルです。次男が生れてからは、物理的に困ることも多くなり、溜まっている洗い物やごみ捨て、子ども服の洗濯なども気づいたら進んでやってくれるようなりました。また、3歳になった長男とのコミュニケーション時間にしたいと保育園の朝の送りを夫から申し出てくれました。子ども達に関わる分だけ夫もできる事が増え、子どもをお風呂に入れることもできるようになり、今はずいぶん助けてもらっています。そして、子ども達も嬉しそうだし夫自身も父としての役割を楽しんでいるように見え、私もそんな家族の変化が嬉しいです。
ワーママとして育児&仕事をしていて良かった~!と思うhappyなエピソードを教えてください!
私は、仕事を考えだしたらずっと頭が仕事のことばかりになり気持ちの切り替えが下手だったのが、保育園のお迎えと同時にその思考は見事に強制終了させられます(笑) 真っ直ぐに向かってくる子ども達の前では片手間な想いは通用しないことを教えられます。気持ちにメリハリをつけ「限られた時間の今を大切にして向き合う」という大切な事を教わっているなぁと思います。
育児&仕事をしていて一番大変なことは? それをどうやって解決していますか(していこうとしていますか)?
毎日の時間のやりくりが大変に感じることは多いです。特に、子ども達の成長のサポートや私自分の挑戦の時間など、実際やってみると時間が足りなかった時に焦ったりイライラしてしまうことがあります。 緊急の体調不良やアクシデントではないけど今重要だと感じる投資時間に対して、自分で時間を捻出できない時、実家の親や夫も可能な限り協力してくれますが、これから家族それぞれの挑戦の時間や親の体調などを考えると戸惑いもあり、将来的にはいざという時にために家族以外でサポートしてもらえるような外部の体制(家事代行やベビーシッターなど)も、先輩ワーママ達に教えてもらいながら考えていこうかと思っています。
育児と仕事、それぞれで一番大事にしていることは?
基本的には、いろいろな人から学ぶことと、気づきから主体的に変化していくことは大事にしています。でも最近、私のせっかちなところで気づきがありました(笑) 何かとすぐ早く決断しなきゃ、解決しなくちゃ、って焦ってしまうところがあり、失敗もしています。だから、組織も家族もチームだと意識しておくことを今一番大事にしています。チームとして共有したり共感したりする時間を丁寧に持つことで、部下に決断を任せて自己実現を支援できる上司でいたい、子ども達の自立や成長を信じて応援できる母でいたい、というところに近づけるよう意識的に頑張っています。「反応ではなく対応を」を戒めに、私の中の忍耐力を鍛え信頼の心を育てていきたいと思っています。
男性中心の業界の中に自ら入ろうと思ったきっかけはありましたか?また入られてからご苦労されたことや良かった!ということがあれば教えてください。
事業を継ぐと決めた際は、経営状況が良くなかった危機感からだけであまり他を想像できませんでした。後に、男性中心業界で「女に何ができるの?」などの言葉に徐々に意識するようになりました。業界でリーマンショックの影響が出だした頃、潮目が変化し、社会全体が「今までと違う感覚」を求めた結果、興味を持っていただいたのかもしれません、話かけてくださることが増えました。そういう意味では、未曾有のリーマンショックは私にとっては悪いばかりではありませんでした。また、そこから業界組織内での異質の有効性にも興味を持ち、ワークライフバランスコンサルタントの資格を取得し、組織の在り方について勉強しています。その中で、色々な業界でのケースと、多くの素敵なワーママとのつながりができ、元気と勇気をいただいている点もとても良かった点です!
お父様の事業を継承する中で大変だったのはどのような点ですか?
ひとつは、財務状況が良くない中だったので、後継者としての目線で創業者の父を説得し会社の健全化を図っていくことが大変でした。もうひとつは、親子だから故に経営再建の間は特にいろんな気持ちになってしまい、つい余計な議論になったり、冷静でいるために適度な距離を保とうとするのに苦労しました。
でもその時期を経て今、父はチームの心強い一員として尊敬できる存在です。
これからの目標を教えてください。
まだまだ私自身がマスコールをチームと位置付けたばかりですが、これから、私たちらしいチームカラーを模索していきたい。その中で、BCM【事業継続マネジメントシステム】で想定外に強い対応力、QMS【品質マネジメントシステム】でお客さんにとって最適な品質、WLB【ワークライフバランス】で働く皆の仕事の質の向上を可能とし、お客様に「安心、安全、快適」を提供しつづけていきたいです。
サイトを覧の皆様(ワーママ仲間)にメッセージをお願いします!
大変だと感じる状況下でも、私は思い切って進んでみることでその状況の見え方も変わってくることを経験しました。もし、今の困難に諦めそうになったり無理だと思っていることにも、目をそらさず向き合う勇気と、自分を信じて挑戦してみることで、違う景色に変化することもあります。いづれにしても、皆さんが今日も良かったと思える充実した一日となりますよう、ワーママ仲間として応援し私も励んでまいります!