今回のパワーママインタビューは3人のお子さんを育てながら、弁護士として相談や案件に関わるだけでなく、大学で後進の指導や社外役員として活躍されている北嶋紀子さん。
北嶋さんは通常業務以外にも大阪弁護士会の男女共同参画推進本部に所属し、弁護士が仕事と子育てや介護を両立できる活動もされています。ご自身の経験から得たことや思いを込めて作成に携わられたハンドブックについても伺いました。
ご自身について教えてください。
・氏名:北嶋紀子
・会社名・職種:フェニックス法律事務所・パートナー弁護士
・簡単な経歴:
大学卒業後、司法修習生を経て2000年弁護士登録(大阪弁護士会)。同年結婚し、2002年に長女、2004年に二女、2006年に三女をそれぞれ出産。弁護士登録以来、産休(長女の時は、産後2か月で復帰)・育休をとりながら、同じ事務所に所属し続け、2012年より同事務所パートナー弁護士に昇格。
・居住地:大阪府
・ご自身の年齢 40歳
・お子様の年齢 12,10,8歳
・ワークスタイル フルタイム
現在のお仕事の内容を簡単に教えてください。
弁護士登録以来、倒産、労務問題、企業からの相談をはじめ、一般民事事件、裁判所から選任される破産管財人や財産管理人等の他、女性の視点を活かし、離婚・相続の家事事件や、高齢者の財産管理等のいわゆる弁護士業務の案件に携わりつつ、一方で、大阪大学法科大学院の非常勤講師、各地方自治体の審議会委員等、また、2015年6月より東証二部上場の企業の社外取締役も兼務させていただいています。
また、3人の子育てと仕事の両立の経験から、ワークライフバランスをライフワークとしており、ワークショップを行ったり、大阪弁護士会男女共同参画推進本部に所属し、同会員の仕事と子育ての両立の負担が少しでも軽減されるための活動(育休期間中の会費免除制度の確立、休業中の業務支援制度、産休・育休・復帰後の仕事と子育て・介護の両立に関するハンドブックの作成等)を行っています。
平日1日のスケジュールを簡単に教えてください。
6:00 起床 (長女の弁当作り、朝食作り、洗濯、掃除)
9:30 出社
17:30 退社
買物、夕食作り、子どもたちの習い事の送迎、家事全般、子どもの勉強チェック(たまに)
24:00 就寝
出産して、ご自身の内面では何が一番変わりましたか?
出産前は、一日24時間、全て自分のために使っていた生活を送っていたことにより、狭い視野でしか物事を捉えることができていなかったと思います。
出産後は、歴史・自分自身のルーツなどの過去のことから、環境問題・社会問題をはじめとする未来のことまで、自身が今ここに存在することのありがたさや、今後、自分の娘達に関わっていくと考えることで、物事の見方、感じ方がぐっと深くなりました。
また、子どもを通じて、多様な背景を持った方達と知り合えたことにより、広い視野、経験していなかった世界を教えてもらえたことができました。
人間的にも少しは成長できて、依頼者様の悩みに寄り添い、トラブルを解決するという今の仕事にとても役立っていると思っています。
ご主人との家事・育児の分担はどうされていますか?
主人とは、子どもが生まれてから、何度も何度も話合い、家庭内の役割分担を相談してきました。主人は、素晴らしいことに(!)男女の性別的役割分担という概念にとらわれず、愛情を持って、必要な家事・育児を分担してきてくれました。子どもが産まれる都度、主人の家事能力が上がり、結婚当初は全く料理をしなかった彼が、今や朝食作り、子どもの弁当作りをはじめとして、臨機応変に全ての家事・育児を必要に応じて担ってくれています。ありがたいことです。
ワーママとして育児&仕事をしていて良かった~!と思うhappyなエピソードを教えてください!
仕事をすることで得られる達成感・経済的自立・精神的自立と家族が与えてくれる日々の生活の中での些細な幸せの両方を経験できるので、本当にありがたいと思っています。
育児&仕事をしていて一番大変なことは? それをどうやって解決していますか(していこうとしていますか)?
なんと言っても時間が足りません!私にだけ1日48時間欲しいと思うこともしばしばです。
でも、優先順位を付けて、取捨選択をしつつ、人に頼めることは頼み、できないことは諦めるということでどうにか日々を凌いでいます。
サポートしてくれる家族、職場の人たち、これまでお世話になった家事代行・子育て支援をしてくれた人たちに感謝感謝です。
専門職としてお仕事をされていると、どうしても外せない用件の時に家族の急病といった突発的なことが出てることもあるかと思います。そのために何か備えておられることはありますか?また実際に起こったときはどのようにされましたか?
子どもが小さい時には、急な発熱などがありましたし、仕事上もまだ新人のため自分の時間を融通できないことが多かったので、複数のベビーシッター業者に登録をしていました。
実母・義母にもサポートしてもらっています。
保育園時代の働くママ達とも協力して、子どもの習い事の送迎等の負担を分担し合ったりすることもありました。
育児と仕事、それぞれで一番大事にしていることは?
日々、周りの人に感謝することです。
あとは、無理をしないこと。
無理は長続きしませんし、無理をすると、必ず自分か周囲の人に悪影響が出るということを、経験して学習しました(笑)。
大阪弁護士会発行の「弁護士のための出産・育児・介護ハンドブック」制作に携わられたそうですが、制作への思いやポイントをお聞かせいただけますか?
これは、大阪弁護士会男女共同参画推進本部が作成したもので、私もその一員として、作成に関わらせていただきました。
多くの弁護士は、新人の頃は、事務所に雇われている勤務弁護士を経るのですが、勤務弁護士の場合、事務所の仕事の他に、自身で獲得する仕事を行うため、「労働者」とはみなされず、労働基準法の対象とならないという問題があります。また、法律事務所は、中小規模のところが多数を占めており、結局、事務所の慣習や経営者側の弁護士の一存で、妊娠・出産した女性の勤務条件(育休期間、給与等)が決められているのが実情です。
私が、第一子を出産した2002年頃は、出産・育児をしている弁護士が少なく、私自身も、私の所属事務所も、つまり雇われている側も雇っている側も双方が、私の待遇・処遇をどうするかを検討するのに困ったという経験がありました。また、待遇・処遇条件の交渉する際には、雇われる側はどうしても立場が弱く、自己の希望を言いにくいという問題点がありました。このため、他の事務所の先例や交渉する際に検討すべき点をまとめた情報があればいいのに!と当時強く思った経験があります。
また、実際に弁護士業務と育児の両立をどうしていったらいいか(「一体先輩達は、どういう工夫をしているの?」)という具体的な情報もほしかったという経験があったので、初版のハンドブックの作成から、「この本は、必ず、この業界に必要であり、これから出産・育児をする弁護士に役に立つ!」、「一人でもこの本のおかげで、仕事と育児の両立の負担が減るように!」と一人、密かに、並々ならぬ思いを注いで作成に参加していました。
同ハンドブックの初版は、平成23年に発行されており、この時も執筆に参加しました。その後、3年経ち、司法試験合格者が大幅に増員され、若い世代の弁護士さんが増えて、出産される女性弁護士や、育児に参加する男性弁護士も増えたことから、男女問わずより多くの実例、具体的体験談、また、徐々に増えつつある介護の体験談をより多く盛り込み、ページ数も2.5倍に増やして、平成26年には改訂版を作成しました。
年配の世代にも読んでいただき、理解してもらえるように工夫もしました。
これからの目標を教えてください。
これからも、ご縁のあった人や仕事を大切にして、社会の一隅を照らすという心持ちで仕事と子育てを続けていきたいです。
また、今後、日本の女性が、当然のように仕事と家庭を両立できる環境を整えることに寄与していきたいと思っています。
最後にサイトをご覧の皆様(ワーママ仲間)にメッセージをお願いします!
13年前に、長女を出産した頃は、女性で、フルタイムの仕事と子育ての両立を実践されている方は少数派という印象でしたが、この間、働くお母さんが増えてきたことを、同志が増えていくように心強く思っていますし、社会的に重要な役割を担う女性に出会うといつもワクワクします。
皆が、知恵を共有し、男女の区別なく、自分らしい生き方が選択できるよう、共に頑張っていきましょう!
インタビューby 湯本理絵