今回のインタビューは、編集のお仕事をされている中田ぷうさん。
ワーママをしながら毎日ご飯をつくる中田ぷうさんが、「今夜のごはん、どうしよう?」と悩むママたちの助けになればいいなぁと思われて書いた”1㎜も頑張らないでいいメニューばっかり”の料理本の誕生ストーリーや、ワーママとしてのワークスタイルをお聞きしました!(椿)
プロフィール
・中田ぷう
・会社名:オフィス バタートースト
・職種:編集者・ライター
・簡単な経歴:大学在学中よりファッション誌でアシスタントを勤める。卒業後、出版社に勤務。2004年に独立。モデルの中林美和さん、AYUMIさん、前田ゆかさん、食空間プロデューサー山本侑貴子氏、スタイリスト福田栄華氏の著書をはじめ、多くの料理本や暮らしの本の編集・プロデュースを手がける。著書に子どものごはん作りの闘いを描いた「闘う!母ごはん」(光文社)がある。
・居住地:東京都
・ご自身の年齢 :43歳
・お子様の年齢 :5歳、13歳
・ワークスタイル:フリーランス
現在のお仕事の内容、ワークスタイルを簡単に教えてください。
フリーで編集の仕事をしてます。
守備範囲は、料理からインテリア、ファッション、風水まで。
モデルや人気料理家、サロネーゼの本を手がけていますが、世間的にはまったくの無名の人でも、「この人だ!」と思ったら、アタック&口説き落として本を作ります(笑)。
プライベートでは、生まれ育った町・西荻窪を盛り上げたくて、幼馴染の料理家・尾田衣子氏と一緒に「西荻新聞」というローカルメディアをフェイスブックで立ち上げました。
https://www.facebook.com/team.kashinomi/
自分たちが本当に信頼し、おいしいと思う店やいいと思うモノしか載せていません。
2人とも呑んべえなので、店のセレクトがオヤジくさいですが、良かったらのぞいてみてください♪
平日1日のスケジュールを簡単に教えてください。
5:00 起床、1分間深呼吸(唯一日課の運動)、昨夜のうちに来ていたメールの返信、仕事
6:00 洗濯機スイッチオン、ラジオ英会話聴講
6:40 朝ごはんのしたく
7:00 夫、娘たち朝ごはん。夕食&翌朝の朝ごはんメモ作成
8:00 夫、娘たち出動。自分の朝食や身じたく・家事(タイマーかけて20分だけ)
9:00 仕事開始
10:00 仕事を一時中断し、夕飯の買い物へ
10:30 仕事再開
12:00 ランチ
13:00 午後の仕事開始
16:00 上の子帰宅。おやつを食べさせる。ごはんの洗米・浸水だけはしておく。
18:00 炊飯器スイッチオン。下の子、お迎え。
18:30 呑みながら夕飯作り(これが至福)
19:00 夕飯
19:30 テレビタイム(子どもの夕飯時やこのときに、15分仮眠を取ることも)
20:00 子どもたちお風呂。合間に仕事。
21:30 子どもたち就寝
22:00 夫帰宅・夕飯
23:00 お風呂
24:00 就寝
出産して、何が変わりましたか?
● 満足な睡眠を失ったこと
● 読書量激減
● 指が太くなった(身体もですが。笑)
産むまでは夢のような「子育てライフ」を思い描いていました。
でも産まれてきちゃったら……子育ては死闘!
母親って、子どものちょっとした動きや物音で目が覚めますよね。
だから、もう10年以上、満足に睡眠を取った記憶がありません。
あと読書量が激減しましたねぇ。
夜、寝る前に本を読むのが習慣でしたが、子どもがいると1日の終わりには気を失うほど疲れているので、布団に入った途端、即死(笑)。月1冊も読めない状態です。編集者としてはどうかと思います(笑)。
そして、先日気付いたのですが、指が太くなりました。
手から繊細さがなくなり、細い指輪をつけても、まったく似合わない!
「女はね、お母さんになって家事、育児に追われると指が太くなるわよ~!」と昔から母に聞かされていましたが、はい、そのとおりです。すっかり太くなりました。
でもいいんです。
間違いなく、私、お母ちゃんですから。
今は開きなおって、“ごっつい指輪”しかしません(笑)。
ワーママとして育児&仕事をしていて良かった~!と思うHappyなエピソードを教えてください。
編集の仕事というのは、世間が抱く華やかなイメージと違い、地道で暗~い仕事です。
展示会に行ったり、有名人と会ったりというのはこの仕事のほんの一部。
残り9割は、アタマをかきむしって企画を考えたり、机にはりついて原稿を書いています。
でも、ある日、上の娘に「ママってさ、本当に仕事好きなんだね」と言われたんです。
「なんで?」と聞くと、「大変そうだけど、仕事しているとき、ママ、楽しそうだもん」と。
確かに自分で望んで就いた仕事ですし、好きだという自覚はありましたが、自分が思っている以上に、この仕事が好きなことに気付かされた出来事でした。
そして、子どもって、ちゃんと母親の背中を見ているものなんだなと、うれしかったですね。
育児&仕事をしていて大変なことはありましたか?それは何ですか?
現在進行形ですが、常に眠い! 常に疲れていることが大変というか、つらいですね(笑)。
でもお母さんって、みんなそうですよね。
それをどうやって解決していますか?
●夜は24時までに必ず寝る。
●寝る前に甘酒を飲む。
甘酒は、江戸時代からある、天然のアミノ酸たっぷりの栄養ドリンク。疲労回復の効果があるんです。でも私、実は甘酒が嫌い! だからスポーツドリンクや牛乳で割って、夜、寝る前に飲んでいますよ。翌朝の目覚めが違います!
育児と仕事、それぞれで一番大事にしていることは?
● 土日、祝日は、オフにする。
ワークライフバランスなんて言葉でまとめられるほど、育児と仕事の両立は甘いものではありません。
どちらが大切かと言われればもちろん「子ども」ですが、私にとっては仕事も生きがい。
だからこそ、オンとオフの切り替えをはっきりするようにしています。
ですから、お仕事をお引き受けする際、最初に「夜の連絡は、緊急じゃない限りメールにしていただきたいこと」「土日は基本、お休みすること」をクライアントにお伝えしています。
書籍を作る仕事は長期戦です。ときには、1年以上に渡ることもあるので、最初に相手側の条件はもちろん、私側の条件もはっきりさせておくことで、お互い気持ち良く仕事ができるようにしています。
その代わり、平日はしゃかりきに働きますよ~!
「闘う!母ごはん」の書籍出版に至ったストーリーを教えてください。
今の世の中、スペック高いママたちの情報ばかりで、スペックの低い私などは疲れてしまって(笑)。
SNSに挙げたくなるようなおしゃれなごはんも作りたいですが、うちは家族全員“米民族”なので、グラノーラやスムージーなんて出したら、一揆をおこされます(笑)!
そんな話を、あるママ編集者としていて、「じゃ、“リアルな本”を作っちゃおうか!」となって生まれたのがこの本です。
どんな本なのですか?
今まで散々、「簡単!」と銘打った料理本を私も作ってきましたが、やはり料理のプロが言う「簡単」と、私みたいなスペック低い女が思う「簡単!」には開きがありすぎるんですね(笑)。
だからレシピ本1冊買っても、作り続ける料理は100ページ中1~2品くらいしかない……。
でも、何しろこの本は、スペック低い私が作っているので、載っている料理は、せん切り、みじん切り、一切なし!
しかもときには、スーパーの寿司や「ペヤング」も出てきます(笑)。
こういう日もなきゃ、働く母親なんてやってられないですよね。
何しろ母親にとって、日々のごはん作りは闘い。
「卵焼いて、1度取り出し、肉を焼いたら先ほどの卵を戻し……」なんて厄介なレシピ、冗談じゃない!
だからとことん、簡単にしました。
読んだ方からは、
「この本すごい! 1㎜も頑張らないでいいメニューばっかり!」
「なぜかこの本は子どもが手に取り、これ作って!とやたら指名される」
という感想をいただくのですが、ほめるとか、賞賛するとかではないんですよね(笑)。
ちょっと異色の食卓日記です。
でも、何よりもこの本の売りは「私自慢のリア充本」ではなく、「逆・リア充本」だということ。
読んで、ママたちが「そうそう!! そうだよね~!!」と、少しでも肩の荷が下りてくれればうれしいです。
出版をきっかけにはじめたことはありますか?
自分の料理の“持ちネタ”って、限界がありませんか。
だから私、SNSにアップされるいろんな人の家庭料理の写真を見るのが大好きなんです。
自分では思いつかない素材合わせや献立があって、とても新鮮。
ひととおり見て、その中から今夜のおかずを決めることもしょっちゅうです。
そこで、「今夜のごはん、どうしよう?」と悩むママたちの助けになればいいなぁと思って、本の出版後も、インスタグラムで続編「#実録母ごはん」をアップしています。
皆さんの「母ごはん」もぜひ見せていただきたいので、もしよかったら「#実録母ごはん」、参加してみてください☆
小さな活動ですが、ママたちの間で少しずつ広まっていったらいいなと思います。
インスタグラム pu_nakata
今後の目標やプランを教えて下さい!
この仕事を引退したら、コンビニメシやファスト食が多くなってしまう若者のために、おにぎりと豚汁の店を開こうと、仲良しの編集者と野望を抱いています。
最後に、メッセージをお願いします。
ごめんなさい、ちょっと長いです(笑)。
数年前のことです。
夜、自宅で校了(印刷所に入れる最後の確認をする作業のこと)を終え、出版社に送ろうとしていたときのことでした。
下の子が真っ青な顔で、脂汗をたらし、「ぽんぽん痛い……」とうずくまってしまったんです。
緊急事態ですが、仕事をおろそかにすることはできません。
子どものおなかをさすりながら出版社に電話を入れ、「校了紙は戻します。でも、大変申し訳ないのですが、子どもの様子がおかしいので、これから病院にいきます。何かあったら電話をください」と伝えて、病院に向かいました。
原因は「ひどい便秘」だったのですが(笑)、ひと騒動終わったあとお詫びの電話を入れると、長~~~い沈黙の後、ひと言「何か用?」と言われたんですね。
そのとき、私の中で「何か」が切れたんです。
フリーランスなんて、一寸先は闇。いつ仕事がなくなってもおかしくありません。だから、みんな必死なんですね。私も今までだったら、子どもが便秘になったことすらも謝って、許してくださいと懇願したと思います。
でも、なぜかこのとき「もういいや。契約書を交わさないからこそ、信頼関係だけが頼りなのに、それすらない人と仕事するのは、もうやめよう!」と思ってしまったんです。
もちろん反面、とても怖かったですよ。
でも、ここでこういう人たちと一線引かないと、この先もずっと下僕みたいな使い方しかされない!と思い、一気に“切った”んです。
自分には「編集の仕事、なくなったらなくなったでいいじゃない。いざとなったらスーパーでバイトしよう!」と言い聞かせ、奮い立たせました。
今、あれから3年経ちますが、あそこで思いきって切ったことで、逆に信頼できる人たちだけが残り、仕事のクオリティも上がりました。
ママになると、こうしたアクシデントにも見舞われますし、働き方だって変わります。
人間関係やクライアントを自分から「切る」というのは、怖いですし、ものすごく勇気がいることです。でも、ときには「切る」ことで風穴が開き、今の自分に合った仕事や人間関係が生まれくることもあると思うんです。
きっと、もやもやした気持ちを抱えて働いているママって、たくさんいるはず。
だからこそ、ときには「切る勇気」も持ってね! 必ず新しい道が開けるから、と伝えたいと思います。