今回ご紹介するのは、かつての同期と共に起業し、専務としてその裏方全てを支えるパワーママ、前本玲さんです。
前本さんは起業から1年で第一子妊娠、そして現在第二子妊娠中。そのタイミングは悩まれたりしなかったのでしょうか。
また起業のお話についても代表とはまた違う「裏ボス」の視点で語ってくれていてとても興味深いです。
ぜひインタビューをご覧ください。
プロフィール
・氏名:前本 玲
・会社名:株式会社ナチュラルリンク
・職種:専務取締役
・経歴:大学卒業後、新卒で人材教育・コンサルティング会社に入社。その後、整骨院受付、大手企業の人材開発部への転職を経て2009年代表高野と共に株式会社ナチュラルリンクを設立。2011年第一子出産。現在第二子妊娠中。
・居住地:大阪府高槻市
・年齢:32歳
・子どもの年齢:4歳
・ワークスタイル:フルタイム
平日1日のスケジュールを簡単に教えてください。
7:00 起床 子どものと自分の朝食、準備
8:30 保育園送り
10:00 出社
16:30 退社
18:00 保育園お迎え
19:30 晩ご飯
20:00 片付け・お風呂
21:00 寝かしつけ
22:00 洗濯・仕事・テレビを見たり、主人の店の事務処理など
24:30 就寝
現在のお仕事の内容を簡単に教えてください。
会社は女性活躍推進コンサルティング事業全般を手掛けています。その中で、弊社の代表が営業で外に出ることが多いので、内部の仕事を一手に引き受けています。研修の準備。会計。HP運営。社会保険等の手続き関係。外に出ないことはとにかく何でもやります(笑)
新卒で入社された会社では、どのようなお仕事を経験されたのですか?
実は私は営業職での採用だったんです。しかし、入社後の面談で「営業部のボスの秘書的な役割の社員が寿退社するから、引き継いでその仕事をやってみない?裏ボスになれるよ!」の一言で営業事務へ転向。新入社員ながら営業部門長の秘書のような仕事に就き、1000名規模の研修の申込処理を1人で行ったり、営業部隊の事務的サポートを一手に引き受けていました。ここでの経験や上司のサポートという仕事が社会人としての仕事に対する価値観の基礎になっています。部門全体の数字の責任を全て負いながら社長からの唐突な指示に対応し、部下の様子も見る上司。側で見る上司の姿は想像より遥かに泥臭く人間味がありました。「何とかこの上司の手助けができれば・・・」と思ったのを覚えています。そして、直接数字を作らない私がこの会社・部門で貢献する為に出来ることは何かと考え、「周りの人が自分の仕事に集中できる環境を作りたい」と思うようになりました。依頼された仕事は断らない、相手の締切より早く仕上げる、口下手な上司の想いを汲み営業の人に伝える、社長の動向を考え突発的な仕事に対応できるよう段取りをする、などです。そして、その為には、自部門だけでなく、社内の様々な人とのコネクションが重要だと学びました。
新卒で入社した会社は、3年で退職されたんですね。それはなぜですか?
もとから3年間がむしゃらに仕事して、すっぱり辞めようと思っていました。大学で、インドネシア学科を専攻していて「いつかは絶対バリに住むんだ!」周りにも宣言していたくらいだったので、本気でバリに行くことを考えていたということもあって。
実際に前職を3年で退職した後は、しばらくはゆっくりすることにしました。肌もぼろぼろになることもあるくらい仕事に必死だったので、自分へのご褒美でゆっくり旅行でもしようかなーと。でも、1カ月ほど経った頃のこと。「やっぱり働きたいー!!!!」という気持ちがふつふつと湧いてきました。
自分でも驚きでしたが、その時に「そうか、私は働くことがすごく好きなんだな」と気づきました。
自分の中では仕事をしている姿のほうが、きっと自然だったんでしょうね。そしてご縁があって、整骨院の受付の仕事に転職しました。立ち上げたばかりで、いわゆるベンチャー企業な整骨院で、毎日何百人という患者さんが来院するとても忙しい店舗でした。その受付業務を一手に引き受けることになったのですが、前職と同様、私は直接売上をあげることはないけれど、どうすれば院の売上があがるのかを考えて仕事をしていました。
そこから、ナチュラルリンクを設立される経緯について教えて頂けますか?
現職の代表とは新卒で入社した人材育成会社の同期でした。内定式で初めて会って、お互いに意気投合。「あれ、この人私と同じ香りがする」と思って聞いてみると、使っている香水が一緒だったり、他にも色々と不思議な共通点がたくさんありました。それ以来、きっとこの人とは将来何か一緒にするんだろうなーと漠然と思っていました。そして社会人になって4年がたった秋のこと。突然代表から電話がかかってきたんです。
「私、会社を興そうと思う!だから、一緒にやらへん!?」私は即答で「うん、やる!」と言いました。
私の即答に「ちょっと待って!まだ何するかも何にも決まってないで!1年後目処に立ち上げるっていうだけしか決まってへんで!」と誘った代表のほうが驚いていましたが、やるという気持ちは変わりませんでした。実はその頃、翌年の2月に結婚することが決まっていたんです。夫にもずっと話をしていたので、夫も私の選択を応援してくれました。そして、「じゃあ何で起業しようか」と話をする中で、「あなたはあと1年はそこで働く(私たちが新卒で入社した中小企業)。私も今は中小企業しかしらないから、起業する前に私、大企業で働いてみる!その二人の経験があれば、なんか面白いことできるんじゃないか!」と提案し、大手企業の人事部に派遣で入社しました。面接で「独立するので、1年後には辞めます」と宣言し、採用して頂いたのですが、当時の上司はとても驚いていました(笑)。「今までに、そんなことを面接で言った人はいないよ。。」と。
その上司の方には、独立した今でもお世話になっています。またこの転職には共に起業した代表自身が一番びっくりしていました(笑)
「あの時、私は玲ちゃんの人生を大きく変えてしまった。もう後戻りはできない。これは本気で起業せないかん!と思った」そうです。
独立した日って、どんな感じなんでしょう?
退職の翌日の9月1日、とりあえず集まろう!と、代表と二人で大阪のカフェで、ノートとパソコン持参でやることを書き出したり、今後の相談をしましたが、不安でしたねー。事務所もない、何もない、大きな会社の肩書もない。私たちは本当に、ジャングルに放り出されて、ここから自分たちで作っていかないといけないんだ!とその時覚悟しました。最初は事業のノウハウもなく手探りで、もちろん売上もあがらず、今でこそ「女性活躍」の気運ですし、取組む企業も増えていますが、当時は「え?何女性活躍って何?ナチュラルリンクって誰?」という感じで、まるで相手にされませんでした。代表が外に営業にいって、私は中を守る。電話の応対だったり、HPのことだったり、中の仕事を全てやっていましたが、最初の1年はほとんど売上があがらず、預金通帳を見る度に金額がどんどん減っていって、それはもう神経すり減りましたね(笑)。
第一子を妊娠されたのが、起業して1年後のことだったんですね。
そうなんです。独立して1年が経ち、「2期はこういう方向で頑張ろう!」と話し合った直後、私の妊娠が分かりました。
周りで妊娠した人もいないし、独立して間もないし、不安は大きかったです。きっと代表も不安だったと思います。とはいえ、お腹はどんどん大きくなるし、準備しないといけないわけで。
その頃から、インターンを採用したり、ITツールを導入して、どこでも仕事ができるようにしたり、広報を頑張って、メディアに取り上げられる機会が増えたりして、少しずつ会社っぽくなっていきました。
出産後は、どのくらいの期間で復帰されたのですか?
私は半年で復帰しました。会社の役員は、育休なんてないので、休んでいる間は無給なんです。
また、私の母はずっと働いていて実家に里帰りしても母はいないので、里帰りせず全部自分で出産前後を乗り切ることになりましたが、
精神的にも肉体的にも大変でしたね。もう正直記憶がないくらい必死な日々で(笑)休んでる期間中、会社のチャット等で情報は常に共有したり見れる状態でしたが、自分が会社から離れてはじめて、「こんなスピード感のあるところで自分は働いていたのか」と驚きました。そして産後半年で、在宅ワークで復帰して、10カ月後に本格復帰。
時短で週3出勤、週2は在宅という形で、流動的にやり方を変えていこうということになりました。
自宅近くの保育園には入れなかったので、子どもと一緒に出勤し、会社の近くの保育園に預けて出社したり、会社に子どもを連れて来れるようにしようと、事務所の一角にキッズスペースを作ったりして。ただ、なんせベンチャーなので、会社はすごいスピード感で進んで行くしどんどん変わっていくし、育児しながら働く私が、果たしてちゃんとついていけているのだろうか、会社が大変なときに時短で申し訳ないなとか、色々な気持ちを抱えて仕事をしていました。でも都度話をして、柔軟に変えていける環境があったことは、私にとっては大きな救いでしたね。
やはり制度も大事ですが、ママといえど個々に状況が違うので、柔軟に対応する企業姿勢がとても大切だなとその時実感しました。その後、代表の結婚出産を機に、さらに会社は大きく変わりました。創業して数年間は「バリバリに営業して仕事をとるぞ!!!」という勢いでしたが、代表の出産後は、いかにWEBで依頼がくるか、いかに何もしなくても売上になるか、いかに自動化できるか、効率化できるか、そんなことばっかり考えているうちに、私たちらしい働き方のスタイルが出来上がっていきました。その間、夫も独立しまして、本当に色々なことがありましたし、今でも日々色々なことが起こりますが、出産を機に自分は腹が据わったなーと改めて思います。
現在、第二子を妊娠されているんですね!第二子を妊娠するタイミングって、悩まれなかったですか?
そうですよね。第二子を妊娠するタイミングについては、働くママはみな悩むと思います。
私も、2人は欲しいな〜と思いつつ時がたち、娘が3歳になって、自分でできることが増えて少し手が離れてきた頃でした。
誕生日に夫から「プレゼントは何が欲しい?」と聞かれて、その時に「私、子どもが欲しい!」と言ったんです。今までいろんな大変なことがあっても、何とかなるし何とかしてきたので(笑)、きっと第二子が生まれても大丈夫だろうと。おかげ様で新しい命を授かることができ、いよいよ来年1月に出産予定です。長女も、はやいもので4歳です。先日保育園の運動会があったのですが、その時の我が子の姿を見て感動して涙が出ました。
知らぬ間に、いろんなことができるようになって、成長したんだな〜って。最近は仕事をする私の姿を見ているので、保育園にあずけて仕事に行くごっこをしたり、私が仕事で忙しいと、「ママは仕事して!私はその間一人で遊んでおくから!」と頼もしいことを言ってくれたりします。仕事をしながらなので、寂しい思いをさせていたり、負担もかけているだろうなと思うこともあるので、そういう娘の姿を見る度に嬉しい気持ちになります。きっとこれから先も色々あると思いますが、どんな経験もムダなことはないし、全てに意味がある。
働く女性がもっとHAPPYになる世の中を作るために、そして自分もいち働く女性として、周りの人達を大切にしながら、自分らしく、楽しく両立していけたらいいなと思います。
最後にメッセージをお願いします!
我が家は主人も私も独立し家での仕事が多いので、子どもは常に働く親の側で育ってきました。
どうしても仕事に集中したい時など、子どもにはさびしい思いをさせていることも、正直多いと思います。
でもそんな私達だからこそできる両立、子どもとの接し方があるなと今では思っています。
人と比べがちになるこの時期ですが、自信を持って働く後ろ姿はきっとお子さんにも伝わっていると思います。
これからも時に悩みながら、でも楽しみながら両立街道を歩んでいきましょう!
インタビュー by 高野美菜子
構成 by 井本七瀬