今回のインタビューは、フットケアサロンを経営する西谷裕子さん!
大学生時代の留学先で英国式リフレクソロジーに感銘を受け、日本でフットケアサロンを開業してから今年で18周年。これだけ長く愛されるサロンを経営されている方はどんな方なのだろう?!と興味を持ちインタビューをさせていただきました。インタビューお読みいただくと分かると思いますが、西谷社長の飾らない経営方法やマインドをあますことなくお話しいただいています。ハッと気づかされ、元気が出ること間違いなし!(千田)
プロフィール
・氏名:西谷裕子
・会社と役職:株式会社ペディキュール 代表取締役
・職種:ドイツ式フットケアサロンの経営
・経歴:
学生時代のオランダ留学をきっかけにドイツのフットケア「フスフレーゲ」の技術を学ぶ。英国式リフレクソロジーの資格も取得し帰国。接骨院、鍼灸院での勤務を経て98年に横浜でフットケアサロンを開業、(株)ペディキュールを設立し代表取締役社長に就任。年間2万人以上のフットケアに携わり、15年以上セラ ピストとして活躍。
・居住地: 横浜
・ご自身の年齢 : 44歳
・お子様の年齢 : 9歳と6歳(女児)
・ワークスタイル:フルタイム
現在のお仕事の内容を簡単に教えてください。
ドイツ式フットケアサロンを経営し、今年で18周年を迎えます。現在はフットケアサロン「フットブルー」を都内と横浜に3店舗運営。その他に女性の経済的自立を支援する活動も展開中です。
平日1日のスケジュールを簡単に教えてください。
パターン化できないので、あくまで一例として…
4:00〜5:00 起床、メール、仕事
6:30 朝食準備
7:00 朝食、夫と子供起床
7:50 子供たち登校、自分も出勤
9:00 社内清掃、仕事
17:00 退勤
17:30 学童送迎待ち
18:30 夕食
20:30 入浴
21:00〜22:00 寝かしつけ(自分も寝落ち)
(17時に退勤できるのはまれ。17時以降の打ち合わせや勉強会などがある場合は、夕食、入浴、寝かしつけは夫担当)
出産して、何が一番変わりましたか?
時間に限りができたこと。
当時は18時半がお迎え時間だったので根本から仕事の仕方を見直し、効率化のため自宅で仕事ができるような体制にしました。それまでFAXでやりとりしていた予約表の変更もPOSを導入したり、まず「ツール」を変えましたね。
あと「これはいま本当に必要なのか?」を考えるようになりました。「この人と本当に付き合わなければいけないのか?」「この時間をこれに費やすべきなのか?」と常に考えています。
育児&仕事をしていて大変なことはありましたか?それは何ですか?
出産したら、メンタルがめためたになったんですよ(笑)。言ってることが支離滅裂。いま考えると女性ホルモンのバランスが変わったんでしょうね。
長女出産の時は生後58日で預けたんです。育休はなし。なので、仕事を離れていた期間は短かったんですが、復帰したら対面恐怖症みたいになってしまって。
10 年間ずっと技術をやってきて、その自信で社員もお客さまも惹きつけていたのに、それを完全に失いました。サロンにいるからこそ全部キャッチできるアンテナ があったのに、離れた期間でアンテナが張れなくなり、またアンテナを違うところに持って行かれているのでもうダメでしたね。
だから復帰したら売り上げがすごく下がっちゃって。私がいない時は社員が「社長のために頑張ろう!」と団結してくれたのだけど、社長である私が復帰したら情緒が不安定だし自信もないしで、荒波を立てた(笑)。
もうくやしくて不安で何度も泣きました。変わらなきゃいけないのにどう変わっていいか分からない。「これは倒産するな…」と思いました。なので、知人に紹介していただいたフットケアスクールに通って、一から技術を学び直すと同時に新しい技術も習得して、それを社員に教えることで少しずつ自信を取り戻していきました。
26歳で起業してから出産するまでは、売上げもマネジメントも「自分がどうにかすれば何とかなる」だったんですけど、それだと代償が家庭に大きく出る。だからこれからはもう人を頼るしかない、と思いました。そして、それからは、こんな状態で社員がよくついてきてくれたなぁ~と感謝の気持ちで、体系的なカリキュラムをつくろう!と社員教育に目覚めました。
ワーママとして育児&仕事をしていて良かった~!と思うhappyなエピソードを教えてください!
ハッピーというか、よかったなと思うのは、育児をしていなかったら会えなかった人と出会えたこと。子供の習い事の教室で一緒になるママとか。
うちは次女に発達障害を抱えてるんですが、そういう施設や病院に行くと色んな人とつながって、色んな経験をさせてもらえる。自分の考えだけじゃないエッセンスをもらえるんですね。
色んなジャンルの人と知り合える。すごいご縁をもらったなと思います。
それと、子供たちがママと仕事を一体に感じていて、「はたらくこと=生きること」と思ってくれている気がします。娘たちの将来は今よりももっと、「働かなくてもよい」という選択自体が難しくなると思いますから。
大変になった時、それをどうやって解決していますか?
昔から人に頼れないタチで。
でも、子供ができてからは「人にうまく協力を求めるのが解決策だ」と痛感しました。なので「協力を求める」「道具を変える」でスピードアップと解決をはかります。
今ままでだと「こんなこと世の中で考えてるのは私だけ!私、すご~い!」(単に若かった)という自己中心的な考え方だったんですが、「な~んだ、みんな同じこと考えてるんだ」と思ったら、早くやったもん勝ちだと気づいて。そうしたら「どうやったら早くできるだろう」「でも時間はすごく限られてるよね」と。今までだと「登山するならもう少し調べて準備して…」だったけど、「まず登山してる人に聞いてみよう!」というマインドに変わりましたね。
ご家族との家事育児分担、アウトソース利用等はどのようにされていますか?
子供が小学校にあがるまでは無理はせず、家事代行サービスを頼みました。週に2回、2時間ずつ、掃除、整理、その他もろもろ。小学校にあがってからは各々が大分できるようになったのでそれをやめ、家庭内でルールをつくりました。「かごの中に洗濯物を入れないと洗濯をしない」とか。夫にも、子供にもそうで す。
マネジメントで気をつけられていること、注力されていることを教えて下さい。
すべての結果は、自分がしたことだと思うことです。何か原因があったから今がある、と認識すること。それはすぐに出る場合もあるし、3年後に出る場合もあります。
いまアウトソーシングってすごく簡単にできるじゃないですか。でも、以前コンサルを頼んだ時、すごく会社が歪んだことがあったんですね。伝えたいことがうまく伝わらない代償って大きくて、お金を支払った以上に人のメンタルをケアするのにすごい時間がかかりました。
結局、会社として存続するために必要なのは教育やサロン運営のノウハウが根幹だと気づきました。その絶対譲れないことに対してのトライ&エラーを惜しまない。
自分たちでやる。失敗を最小限にするために、先に仕込む、先に準備する時間をなるべく多くとるようになりました。
これだけフットケアサロンがある中で、18年続いているフットブルーの特長を教えてください。
私たちの行っているドイツ式フットケアは足裏マッサージではなく、巻き爪などのトラブル対応始め、爪や足の角質をその人に合わせて細かく丁寧にケアするも のです。かといって決して緊急メンテナンスではありません。「身体の根本を整えていくもので、生涯に渡って大事なもの」だということを皆さんに広く知って頂きたいなと思っています。
美容院やエステやマッサージなど、頭から脚までは皆さんわりとメンテナンスをするんですが、実は「足(の裏)」には無頓着。でも自分が立って歩いているおおもとの、大事な部分のはずですよね。
私たちはお客さまを見た瞬間に、立ち方や靴の減り方で歩き方のクセや身体の調子の悪い部分が分かりますし、足を見るとその人が抱えるストレスにもすぐ気づきます。そのくらい、足にはその人の全部が出てしまうんです。
だから「フットブルー」ではセラピストとお客さまの二人三脚でじっくりと根本からのフットケアをしています。きちんとケアし続けると、身体もメンタルも驚くほど変わっていくんですよ。約ラップ2枚分の角質をケアしただけで、足から上がこんなに調子がよくなるなんて!と驚くお客さまもたくさんいらっしゃいます。
物理的な意味でも、精神的な意味でも、「いつまでも自分の足でしっかり立って元気に歩いてゆきたい」という女性を全力でサポートしていますので、ぜひご来店下さい。
西谷社長が考える、女性が活躍する社会とはどのようなものですか?
まず「自分で選択する勇気」を女性自身が持つことですね。「自分の人生は自分が主役」という意識をもつこと。私たちも手に職をもった女性たちが活躍する場を提供したくて色々やっていますが、提供してるだけじゃ意味がなくて、その人自身にそのマインドがないとだめなんです。
「ヒト・モノ・ウツワ」というのが揃うのが条件だとして、ウツワもあって、ツールもあるんだけど、肝心なヒトの「自分でやるっ!」がないと。「自分の人生は誰かが助けてくれるから、あくせく働くなんて」と思ってたら、こちらが一生懸命、何を提供しても噛み合わないんです。
せっかく何でも選べるチャンスがあるのにやらなかったり、選択に伴う責任が重たくて避けちゃうのは、自分の人生から逃げてることです。女性自身のメンタリティをもう少し強くして「もう決めないとだめだよね、選ばないと進まないよね」的な考え方をしていかないといけないのかなと思っています。気付いた時には、時すでに遅しです。
育児と仕事、それぞれで大事にしていることは?
「そこにいなくても、いる存在」だって思わせること。
家庭なら、ママがいなくてもいたらきっとこう思うだろう…という。
「帰って来たら絶対に掃除しろって言われるな」とか(笑)。会社なら、きっと社長はこう考えるだろう…と。いなくても空気感、圧力感みたいなのを醸し出したいと思ってます。
ちょっとコワいかもしれないけど、安心感もあげたいんです。「何かあったらママが、社長が、必ず助けてくれる」っていう存在でいたいです。
今後の目標やプランを教えてください。
まずは、もっともっとフットケアを知ってもらうこと。
そして、多くの女性が精神的にも経済的にも自立して活躍できる環境を提供していきたいと思っています。
せっかく手に職を身につけてもなかなか活かせない人が多いので、それをどう活かして自立独立していくのかを体系立てて伝えていきたいですね。色々な失敗もしましたから。そのためのフローや新しい事業を確立しようとしています。
最後にこちらのインタビューをご覧になっている方に向けてメッセージを。
人は人の一面しか見ていないと思うんです。
例えば、スーツを着てお迎えに車を乗り付けた私と、雨の中、Gパン姿で子供たちと傘をさしな がらバスを待ってる私、子供を病院に連れて行って診察待ちをしている私とでは、相手に与える印象は全く違うんですよね。でも、子供は全部をひっくるめてママとして見てくれてます。良くも悪くも。素の自分を丸ごとみられている感じです。
人目に映る「素敵なワーキングママ」どころか、毎日毎日、これでいいのかなと思いながらやっていて、よく泣くし、よく叱る。よく笑いもしますけど、よく落ち込みます。その子とのつながりで、たった一つでも、受け取ってくれたものがあればそれでいいのかなって、子育て10年目にして感じられるようになりました。
ドラえもんに登場するママみたいに、のび太の0点答案に一喜一憂することなく、子育てはロングスパンだね~くらいの気持ちで楽しんでいきましょう。
インタビュー : 恩蔵 あゆみ