今回のご紹介するのは、広告会社で活躍する太田理奈子さん。6歳の男の子のママです。
お子さんが生まれるまでは仕事が大好きで、土日も会社にいるくらいののワーカーホリックだったとか。育休を取ったのは会社史上初、復帰後もしばらくは不規則生活を続けたそうです。そんな太田さんですが、徐々に子育て両立型にシフト。そのきっかけとは何だったのでしょうか?
クリエイティブなお仕事を続けられてきたからこそ子育てもクリエイティブに。ご主人や義理のご両親と家族みんなで子育てを楽しむというグッドスパイラルについても伺いました。
太田さんの魅力の詰まった素敵なインタビューです!
プロフィール
・氏名: 太田理奈子
・会社名: 広告会社
・職種: コミュニケーションデザイナー
・簡単な経歴: 大学卒業後、総合広告代理店に入社し、クリエイティブ局にて、広告のコピー&CMプランニングに従事。9年目に長男を出産し、会社では女性初の育児休業を取得した。生後9ヶ月で、同クリエイティブ局に復帰し、息子が3歳まで続けるが、育児との両立が厳しく、異動願いを出しクリエイティブマネージメントへ。
・居住地: 恵比寿
・ご自身の年齢: 39歳
・お子様の年齢: 6歳 (2008年生まれ)
・ワークスタイル: フルタイム
現在のお仕事の内容を簡単に教えてください。
・クリエイティブ研修や全社セミナーのプログラムの企画・実施。
・国内賞・海外賞の支援や、国内外のプロモーションをキュレーション。
・社会課題から発想し、アイデアで解決するラボの主催。
・広告業界のさまざまなクリエイティブ関係の委員会。
・広告ソリューション。など。
平日1日のスケジュールを簡単に教えてください。
7:00 起床→朝食準備
7:15 朝食→食洗機へ
8:00 メイク開始
(息子:食器片づけ→歯磨き→検温→保育園の準備→虫よけスプレー)
8:30 家を出る
8:40 登園 → 保育園の部屋まで送り、行事チェック。
9:30 出社
午前中:メールチェック・打合せ
午後 :企画・打合せ・プロモーション事例のキュレーション・編集・セミナー他
18:00:保育園お迎え~食事~シャワー~ワーク(義父母が20時までに終わらせている)
19:30~20:30 会社を出る
20:00~21:00 帰宅→息子とのトークタイム・ママ夕食(適当)
21:30~22:00 息子就寝(添い寝は、基本ママで、最近はパパも分担)
22:00~ 洗濯→報道ステーション→保育園ノート記載→WBS→炊飯
(FB・読書・フォトブック制作、週末の予定決め・仕事をやることも)
25:30 ママ就寝
広告会社のクリエイティブ関係のお仕事をされているとのことですが、いつから志されたのでしょうか?
もともとNHKしか見ることができない厳しい家庭に育っていたので、広告の仕事より、本当はドキュメンタリー番組をつくりたかったんです。NHKスペシャルみたいな(笑)。将来のことを考えたのは大学に入ってからで、ドキュメンタリーの強さに惹かれ、人はひとつの人生しか生きられないから、いろいろな人の人生を見たいし、それを伝える仕事がしたいと思っていました。でもなかなかテレビ局の入社は難しくて、その後にはじまった広告会社へ転向したら、いくつかの会社で内定をいただいて、OB訪問をしていちばん社員が魅力的だった今の会社に決めました。そしてたまたま運良く、クリエイティブ局に配属されました。
育児とお仕事の両立についてお聞かせください。お子さんが生まれる前と比べて働き方は変わりましたか?時間が不規則というイメージがありますが、何か工夫している点はありますか?
子どもが生まれるまでは、明るいワーカーホリックでした(笑)。仕事が大好きで、ときには辛いんですけど、楽しくて、週末もずっと企画を考えていました。会社や制作会社に住んでいたといっても過言でないくらいの生活でした。家に帰るのはだいたい午前2時くらい。仕事終わりで先輩たちと飲みに行くと、4時とか5時帰宅も普通でした。プレゼンに向けて、毎日が文化祭前夜みたいでした。広告戦略を考えたり、CMのストーリーを考えたり、ビジュアル資料探したり、コピーを書いたり、商品名を考えたり、店舗を見に行ったり。CMなどの撮影で海外ロケも多かったので、家族といる何倍も会社の人と一緒にいたわけです。クリエイティブには答えがないから、延々締切まで考え続けるしかない。徹夜もたくさんしましたし、曜日感覚が無くなり、土日も気づくと会社にいる、といった生活でした。ただ、“締切”という神様がいるので、終わらない仕事はないというのがいいんですよね。
子どもは、もともと大好きだったのですが、どうも仕事以上にはなれなかったというのが正直なところで、32歳になるまで子どもをつくりませんでした。仕事って一度ブランクが空いてしまうと、きっと同じようには働けなくなるだろうなとか、お金をいただいて働いているぶん、相手の期待以上の価値を創出したい。という変な意地が働いていました。
でも、息子が生まれてやっとわかったんです。人生にはリセットも必要だってことが。出産という偉大な痛みと共に、仕事人である前に、ひとりの人間であることの大切さに否応なく気づかされました。息子との生活で、世の中の人と同じ目線で物事をみたり、感じたりすることから、社会課題もたくさん見えてきました。広告だと主婦ターゲットの商品やサービスが多いので、ワーママは大変貴重な存在だと思います。ただ、過酷な仕事だけに、なかなか少ないのが実情です。私が会社史上初の育児休暇を使った女性でしたから(笑)。その後、毎年のように出産する人が続き、今では会社内のママたちのランチ会ができるまでになって、本当に嬉しく思っています。
復帰は、息子が9ヶ月のとき。4月入園しないと待機児童になることから育児休業は使いきりませんでした。それでも区立の認可保育園は落ちて、認証保育園の補欠でした。入園できたからよかったのですが、はじめはとにかく、仕事との両立は大変でした。まだ9ヶ月の息子を保育園に送り届け「ママ、ママー」と戦時中の別れかと思うくらい泣きながら離れない息子の手を振り払って会社に出勤していました。この日々が1ヶ月以上も続き、へこたれそうになりました。ただ、仕事のブランクはほとんど感じず、それは不思議なくらいでした。やはり10年近く同じ部署で働いていたので、すっと仕事に入れたのです。何より、義父母が住んでいる家を引き払って、近くに移り住んでくれたおかげで、フルタイムというスタイルも変えることなく働くことができました。ただ、身体的には本当につらかったですね。昼頃には母乳がたまって痛くて、トイレで搾乳して捨てるといった日々。朝は、離乳食を渡して、会社にいくのですが、翌朝渡す離乳食を夜につくらなければいけない。帰ったら、お風呂に入れて、添乳して寝かせるのですが、2、3時間おきに起きるわけです。夜ご飯なんて二の次。でも母乳を吸われると、極度にお腹が減ってきて、冷凍食品をチン!食べようとすると、泣き声が聞こえてくるのです。結局食べられずにまた、添乳するといった生活。洗濯も、仕事の企画も、寝せてからやるので、時間がない。「どうして、ママの嫌がらせするの?お願いだからいい子に寝てよ!!」とまだ何もわからない赤ちゃんに向かって、怒りをぶつけて、自己嫌悪の日々でした。お腹も空いているし、やることは山盛りだし、バッドスパイラル。もし、今だったらきっと赤ちゃんが泣いていても、泣くのが仕事だから、そのうち寝るから大丈夫と、大きな気持ちでいれる自信があるのですが、あの頃は何もかもが初めてで、泣きすぎて死んじゃったらどうしようとか心配に心配を重ねていました。
しかし、一歳半ごろ、ひとつめの転機が訪れました。「卒乳」です。母乳を飲まなくなると、6時間くらいは、起きないで寝ていてくれるようになったのです。おっぱい星人と言いたくなるくらい、おっぱい好きだった息子が、3日間ですんなりやめられたことに驚きました。知らない間に、子供は成長し、むしろ成長できていないのはママの方なんじゃないかと痛感した出来事でした。息子が寝てくれるようになって、夜の時間が増えたのは、私にとってすごく助かりました。
3歳まで、毎日睡眠時間が3時間という生活を続けていましたが、やはり不規則な仕事は、息子の生活にも影響を与えました。ママと一緒にいる時間が少ないストレスで、おじいちゃんおばあちゃんに当たり散らしたり、ママが帰ってくるまで一秒たりとも寝てくれないので、深夜0時を過ぎても起きている息子を見て、発育に影響がでるのではないかと心配の種でした。どんなに遅く帰った日でも「世界でいちばん、息子ちゃんのことが好きだよ。」と言ってぎゅっと抱きしめて寝ることだけは、欠かさずやっていました。「世界でいちばん、ママが好きだよ」とぎゅっと抱きしめ返してくれる息子の姿に涙が出そうになったこともありました。そんな姿を最初から見越していたパパ。
部署を異動した方がいいと言われ続けて既に3年が経っていました。ぜったいやりきって見せるんだ!という体育会系精神を持つ私も、清水の舞台から飛び降りる気持ちで、ついに異動願いを出したのです。これが2つ目の転機です。次にいった部署はクリエイティブ局やマーケティングデザイン局など、スタッフ部門を統括する部署でした。そこで、私はクリエイティブ局で培ったキャリアを活かしながら、若手スタッフの教育関係や、セミナーなどのスキルアッププログラムや、国内賞・海外賞・海外派遣などの支援など、多岐にわたり担当しながら、会社の組織というものを学ばせていただいています。また良質な広告をまとめ、全社に配信するという自己研鑚にもつながる仕事ができたことで、身体の中のどろっとした血が、サラサラになったような、そんな気分になりました。年間200以上の事例を編集しましたし、セミナーや研修にも1年で10年分くらい出ました。また1年目に1年間かかったことは、翌年は後輩の協力を得て半年で達成するなど、質とスピードの向上などにもチャレンジしています。組織の中で成果を出す以上、なるべく自分で得たノウハウは、ひとりでも多くのみんなに還元したいと思っています。すべての仕事には課題があって、その設定をいかに高く設定するか、それを解決するアイデアを生めるかどうかが大事だなと、常々思っています。少しずつ体質改善した私は、昼にはランチに行けるようになり、土日は息子と習い事を4つをかけもちながら、ママ友との予定を入れられるようになりました。これは大きな成果でした。
出産して、ご自身の内面では何が一番変わりましたか?
自分の命に代えて守りたいという、息子を授かったことで、仕事をするにも生きがいを感じるようになりました。一日一食しか食べないこともありましたが、出産してから2~3食は食べるようになりましたし、出産してからの方が心に余裕ができた気がします。
ご主人との家事・育児の分担はどうされていますか?
できることや、それぞれの得意分野で分担しています。パパはサラリーマンから自営業に転身して、自分で事業をやっているので、夜が遅いので朝もあてにはできません。保育園への送迎はママ。お迎えは義父母にお願いしています。夜はずっとママ担当でしたが、5歳を過ぎてパパと寝られるようになってからは、パパが早く帰ってくると一緒に寝ています。保育園であった出来事をベッドの上で話し合う姿は大変微笑ましいです。習い事を決めたり、通わせたりする付き添いはママ。車で送るのがパパ。そしてパパは何でも教えるのが上手なので、水泳も、サッカーも、ダンスも、包丁の持ち方も、iPadで動画を見せながら、パパが教えます。そして、料理はママ、味見はパパ。炭火焼をやるときは、食材を切るのはママ、火おこしはパパ。食洗機に入れるのはママ、食洗機に入らない鍋を洗うのはパパ。ゴミをまとめるのはママ、捨てるのはパパ。洗濯や掃除は基本ママ。パパがいるときは息子の分と自分のシャツは干してくれます。生まれた当初は、家事・育児比率でよく喧嘩をしましたが、手分けをすると、なんでも早く終わるので、比率ではなく協力し合うようになりました。育児も家事も量ではなく、助けようとう気持ちなのかな。と思えるようになってからは、イライラすることも減りました(笑)。パパが仕事で頑張ってくれていると、すごく嬉しいので、家族みんなで応援しています。
ご主人のご実家が近いと伺いました。義理のご両親がお近くにいらっしゃることはワーママを続ける上でメリットになっていますか?
もう、義父母なしには、今の生活は成り立ちません。もう、完全におんぶにだっこ。私は大変恵まれています。帰りのお迎えも、義父母で、最近ではご飯も食べさせてもらい、お風呂にも入れてもらっていています。義母は元美容師さんだったので、息子はプロにシャンプーをしてもらって気持ちいいみたいで、その気持ちいい顔を見ると義母も嬉しいという、グッドスパイラル!義父は息子にべったりで、親友の中の親友。廃材でなんでも作っちゃうスーパーおじいちゃん。自然や虫が大好きだから、夏になると蝉をとったり、カマキリを捕まえたり。親ができないことを、たくさん体験させてくれるからありがたい。最近では、毎日1ページのワークをやったりと勉強もみてくれています。義母は、もともとワーママの大先輩だっただけに、本当に理解があります。2世帯で住んでいるので、平日は部屋を掃除してくれるし、保育園から持って帰る息子の洗濯物は洗ってくれます。休日の夜は、一緒に外食することも多い。平日働いているんだから、外で食べましょうと誘ってくれる義母は、本当にワーママの強い味方です。月に2回くらいは、私が家でご飯をつくって義父母を呼んでみんなで食べていますが、月4回くらいは一緒に外食しています。夏の旅行を義父母との恒例行事として楽しんでいます。
ワーママとして育児&仕事をしていて良かった~!と思うhappyなエピソードを教えてください!
・育児では・・・家族の絵は、義父母を必ず入れて5人家族のニコニコ顔を描いてくれます。仕事をしているからこそ絆が強いのです。義父は、昔の知恵で、なんでもおもちゃを廃材で作ってくれるに違いありません。ワーママ育児は、いろんな人に助けてもらうことによって、周りの人も幸せにしてくれる力を持っているなと思います。それは家族だけでなく、保育園のママたちや、ママつながりで仲良くなったすべての人に出会えたのは本当に息子のおかげだし、ほどよく家事を手抜きして、遊びに行ったり、外食したり、ちょっと贅沢な旅行をしたりできるのも、ワーママだからできる特権かもしれません。
・仕事では・・広告会社の仕事は、主婦をターゲットにしているものも多いので、全社の営業やスタッフから相談を受けることが多くなりました。また、社会課題が実感を持って見えてきたのがいちばん大きかったです。待機児童の問題、ベビーカー段差問題、優先席の問題、離乳食問題、シルバー層の生きがい問題、医療問題、ワーママのワークスタイルの問題など。世の中の課題があれば、それをいろんな企業と解決していくアイデアを生んでいくのも、広告会社の仕事だと思っています。そんな思いもあって、数か月前、社会課題からアイデアを考えるラボを会社の中につくって、サークルのように週一で活動しています。今生きている世の中が少しでもハッピーになったら、こんなに嬉しいことはないなと妄想しながらワイワイやっています。
育児&仕事をしていて一番大変なことは?
時間が24時間しかないということでしょうか。育児でも仕事でもやりたいことが多すぎるので、最終的には寝ないという選択肢になってしまいます(笑)。あとは息子が熱を出した時がいちばん大変ですが、1年に1~2回程度なので助かっています。仕事では、あまり遅く帰れないことですかね。出張とか、なかなかできないのが実情です。
それをどうやって解決していますか(していこうとしていますか)?
ひたすら夜中にいろいろやっています。育児や仕事のこと。そして息子が具合悪くなりそうだと予感したら、土日にすぐ病院に行くことにしています。365日22時までやっているクリニックが近くできたので、すごく助かります。仕事で遅くなるときは、義父母に事前に話しておいて、ベッドまで寝かせてもらっています。ただ、私が帰ってくるまで、ベッドで絵本を読んだりして待っていて、なかなか寝てはくれないんですけど(笑)。あとは、パパが早く帰ってこれる場合は、パパに寝かせてもらっています。最近は1人で寝るというのもトライしているんですけど、少し1人で寝るとさみしくなって、ママ一緒に寝て~となってしまいます。少しずつ増やせたらいいなと思っていますが、寝る時間も息子との大切な時間なので、慌てなくてもいいかなとも思っています。
育児と仕事、それぞれで一番大事にしていることは?
・育児では・・・「気持ちを聞いてあげること。」「理由を話すこと。」
保育園で、今日いちばん楽しかったことは?と毎日聞くようにしています。嫌なことがあると、ちゃんと話します。とにかくおしゃべりをして、解決しますね。つい怒っちゃうんですけど、理由は必ず話すようにしています。そして怒った後は「もう怒らないから、言いたいことを話してごらん。」と言い分をきくようにしています。意外と、私が誤解していたりすることもあるので(笑)。
・仕事では・・・「最適な解決策を出すこと。」「楽しくすること。」
どんな仕事にも課題があって、それをどういう解決策に導くのか、そのアイデアを考えます。答えをひとつと決め込まないと、意外と出口が見えてくることもあります。
これからの目標を教えてください。
・育児では・・・「家族や友人を幸せにする育児。」
・仕事では・・・「誰かを幸せにする仕事。」
“No matter what people tell you, words and ideas can change the world.”
「誰が何と言おうと、言葉や発想は世界を変えることができる。」
という米コメディアンで俳優のロビン・ウィリアムズの言葉が大好きで、育児でも仕事でも、既成概念にとらわれずに、誰かをハッピーにしたいと思っています。たとえば、息子の朝の支度が遅くて、あれしたの?これしたの?と言わなきゃいけない生活を脱するために、TO DO LISTを書かせたりとか。たまにテレビを見すぎて、それでもやらないときはありますが「いま、何番?」で済んで、はるかに楽です。本人のやる気もアップして、みんなハッピーです!
サイトを覧の皆様(ワーママ仲間)にメッセージをお願いします!
「人生、ネガポジ反転!」
どんなにつらいことでも、つまらないことでも、ポジティブに変換しようと思って生きるかどうかで、人生はもっと楽しくなる。誰かを頼ることで、幸せになる人もいる。完璧じゃないことが、誰かを育てることもある。子どもの幸せは、一緒にいる時間の長さじゃなくて、愛情の深さだと思う。ごめんねって思うときもあるけど、世界でいちばん愛しているから、きっとわかってくれるんじゃないかな。大丈夫、自分の選んだ道が、いちばん幸せな道なんですから。
インタビューby 柴田 広夢